*結ばれない手* ―夏―
「お前……杏奈と会ってた訳じゃないだろうな?」

 ──や、やっぱり怖い~!!

「か、買い物に行っていただけです……」

 と、露出した足を隠すようにショップの袋を前側に寄せる。

「お前が自分でそんな服、選ぶとは思えないがな」

 ──ギクッ! 見透かされてる……。

「イ、イメージチェンジです! もう『ガキ』なんて言われないようにっ」

 ──そうよ。これからはあたしだって……。

「……もしかして、昨夜のこと気にしてるのか?」

 そのすっとんきょうな声と、上方にあった視線が随分降ろされて、モモは凪徒があの発言を気にしていなかったことに気付かされた。

 ──って相当デリカシーがないのでは……? でも、それなら「あれは冗談だった」と言ってくれるのだろうか?

「……」

 少女の心の内を探るように覗き込んだ凪徒の瞳へ、モモも抗議の眼差しを合わせる。──が、

「と、とにかくっ! 杏奈に何吹き込まれたんだ!?」

 ──冗談だったって、言ってくれないんだ……。

 自分が発した言葉をうやむやにしたいかのように慌てて話を戻した凪徒に対して、モモは少し失望し、そして意地悪をしたくなった。

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