*結ばれない手* ―夏―
 今の自分に一体何が出来るのだろう?

 謝ることは簡単だが、おそらく凪徒の心に響かないことは理解出来る。

 とにかく凪徒の嫌がることはもうしたくない。

 杏奈は近い内にまた来ると言ったが、それからどう逃げたら良い?

 いや……その前にやるべきことをちゃんとやるべきだ──そう、空中ブランコ──。

 いつも以上に集中しよう。明日の午前と午後二回の公演(夏休み期間中は、平日公演も土日同等の公演回数がある)。

 真剣に、身体の末端まで神経を行き渡らせて、美しく優雅に。

 全身全霊を傾けて演舞に取り組めば、きっと先輩も自分が心機一転励もうとしていることを分かってくれる筈──そこにしか挽回(ばんかい)の余地を見出せなかった。

 ──ちゃんと演舞をやるなら、ぐっすり眠らなくちゃ。昨日も良く眠れなかったし……えと……どうして眠れなかったんだっけ……?

 それを思い出す前に、モモは深い何処かへ落ちていった──。



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