*結ばれない手* ―夏―
[11]否定と集中
──こいつには一切筒抜けなのか……?
凪徒は二の句が継げないまま、心の裏側で当惑した。
しかしここでぼんやりしていたら勝手に肯定されてしまう。
硬直した唇を何とか動かし、
「……あいつは『コレ』でも『ソレ』でもない上に、女でもなければ、人間でもないっ!」
「は……?」
振り絞った言葉に、暮は思わず口をあんぐり開けてしまった。
「……何だ、それ? お前よっぽどその美人を嫌ってるんだな」
「もう……これ以上あいつの話はよしてくれ」
疲れたように顔に手を当て、正面に立った暮の身体を退かして歩き出す。
暮はやれやれと言った調子でその後に続き、
「わーったよ。もうこの話はしない。あんまりお前を困らせると、モモをブランコから落とされかねないからな」
「誰がそんなヘマするか」
既に朝食の準備全てを仕上げてしまったモモが、食堂プレハブの入口で待っていた。
他の独身組はもう食事の最中だ。
凪徒は歩みの先にある少女の笑顔も、後ろについて来る暮の気配も一切遮断した。
部屋に入り、黙々と口の中へ料理を放り込んだ。
☆ ☆ ☆
凪徒は二の句が継げないまま、心の裏側で当惑した。
しかしここでぼんやりしていたら勝手に肯定されてしまう。
硬直した唇を何とか動かし、
「……あいつは『コレ』でも『ソレ』でもない上に、女でもなければ、人間でもないっ!」
「は……?」
振り絞った言葉に、暮は思わず口をあんぐり開けてしまった。
「……何だ、それ? お前よっぽどその美人を嫌ってるんだな」
「もう……これ以上あいつの話はよしてくれ」
疲れたように顔に手を当て、正面に立った暮の身体を退かして歩き出す。
暮はやれやれと言った調子でその後に続き、
「わーったよ。もうこの話はしない。あんまりお前を困らせると、モモをブランコから落とされかねないからな」
「誰がそんなヘマするか」
既に朝食の準備全てを仕上げてしまったモモが、食堂プレハブの入口で待っていた。
他の独身組はもう食事の最中だ。
凪徒は歩みの先にある少女の笑顔も、後ろについて来る暮の気配も一切遮断した。
部屋に入り、黙々と口の中へ料理を放り込んだ。
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