*結ばれない手* ―夏―
──親同士が決めたって、ずーっと昔のことなんだろうか……だから東京のカフェで杏奈さんはああ言ったの? 『貴女には手の届かない相手になることだし……いえ、元々そうなのかも』──の『元々』。
「あ~また眠れなくなっちゃう!」
思わず声を上げてしまい、コソコソと布団の隙間から周りを見渡したが、幸い誰も目を覚ましてはいなかった。
再び身を丸めて眠りにつこうと試みるが、どうしても瞼が閉じてはくれない。
──でもどうして杏奈さんは、先輩があれほど嫌がる素振りをしても平気でいられるんだろう……それくらい先輩のお父さんの権力ってすごいんだろうか。だとしてもあの状態で結婚して、二人幸せになれるの……?
『結婚』……自分で考えたこの漢字二文字が、自分自身をたじろがせていた。
それこそ手が届かないどころか、それを機に会社へ戻られたら、もう二度と会うことも叶わなくなってしまう。
「あ~また眠れなくなっちゃう!」
思わず声を上げてしまい、コソコソと布団の隙間から周りを見渡したが、幸い誰も目を覚ましてはいなかった。
再び身を丸めて眠りにつこうと試みるが、どうしても瞼が閉じてはくれない。
──でもどうして杏奈さんは、先輩があれほど嫌がる素振りをしても平気でいられるんだろう……それくらい先輩のお父さんの権力ってすごいんだろうか。だとしてもあの状態で結婚して、二人幸せになれるの……?
『結婚』……自分で考えたこの漢字二文字が、自分自身をたじろがせていた。
それこそ手が届かないどころか、それを機に会社へ戻られたら、もう二度と会うことも叶わなくなってしまう。