*結ばれない手* ―夏―
[2]不眠とデート 〈L♪〉
翌日は休演日のため、そして羽目を外し過ぎたメンバーが寝過ごしたお陰で、午前中はまだまだ静けさの漂う楽屋裏だった。
「おはよーモモたん。あれ? どしたの?」
モモは独り自分の寝床である車からそっと出て、サーカステント近くの翳ったベンチに腰かけていた。
夏の暑さを忘れさせてくれる涼しい風が、肩越しの茶色い髪を撫でてゆく。
「リン……ちゃん?」
自分の名を呼ぶ声に、ゆっくりと顔を傾けその姿を見上げた。
中国から遠征して三年になる雑技団のリンが、興味深そうに自分を見下ろしている。
「おはよ。どうもしないよ、ちょっと眠れなかっただけ」
モモは少し恥ずかしそうに足元へ視線を戻す。
昨夜の一件がモモの眠りを妨げていた。
あれからしばらくしてキッチンカーの冷蔵庫にビールを戻し、ふて寝を決め込んだが、結局深い眠りに落ちることはなく、フツフツとしながら朝を迎えてしまったのだ。
リンは「ふうん」と答え、隣に腰を下ろした。
「おはよーモモたん。あれ? どしたの?」
モモは独り自分の寝床である車からそっと出て、サーカステント近くの翳ったベンチに腰かけていた。
夏の暑さを忘れさせてくれる涼しい風が、肩越しの茶色い髪を撫でてゆく。
「リン……ちゃん?」
自分の名を呼ぶ声に、ゆっくりと顔を傾けその姿を見上げた。
中国から遠征して三年になる雑技団のリンが、興味深そうに自分を見下ろしている。
「おはよ。どうもしないよ、ちょっと眠れなかっただけ」
モモは少し恥ずかしそうに足元へ視線を戻す。
昨夜の一件がモモの眠りを妨げていた。
あれからしばらくしてキッチンカーの冷蔵庫にビールを戻し、ふて寝を決め込んだが、結局深い眠りに落ちることはなく、フツフツとしながら朝を迎えてしまったのだ。
リンは「ふうん」と答え、隣に腰を下ろした。