*結ばれない手* ―夏―
[19]別れとアイスティ
それから月曜火曜の貸切公演を含む計七回の興行は華々しく幕を閉じた。
一週間振りの休演日を迎えようという前夜、モモは中国雑技団のメンバーからカードゲームに誘われて、彼女達のプレハブに向かっていた。
「あ……」
「お、おう」
手前の寝台車から現れた黒い影につい声を上げたが、凪徒自身は何だか決まりが悪そうだ。
それもいつものジャージ姿ではなく、綿シャツ・ジーパンに大きなボストンバッグを抱えている。
「先輩、どこか行くんですか?」
モモもさすがに尋ねたが、凪徒は一度宙を仰ぎ、
「んー、風呂な」
適当にごまかそうとした感ありありだった。
「そ、そうですか。それじゃ……」
モモはその嘘を問い質すことはやめにした。
あの噂が流れてからブランコ以外での会話のない二人には、こんな立ち話でさえも気まずい空気が流れてしまう。
もし誰かに見られたら、また噂が噂を呼ぶに違いないと恐れすらも感じていた。
一週間振りの休演日を迎えようという前夜、モモは中国雑技団のメンバーからカードゲームに誘われて、彼女達のプレハブに向かっていた。
「あ……」
「お、おう」
手前の寝台車から現れた黒い影につい声を上げたが、凪徒自身は何だか決まりが悪そうだ。
それもいつものジャージ姿ではなく、綿シャツ・ジーパンに大きなボストンバッグを抱えている。
「先輩、どこか行くんですか?」
モモもさすがに尋ねたが、凪徒は一度宙を仰ぎ、
「んー、風呂な」
適当にごまかそうとした感ありありだった。
「そ、そうですか。それじゃ……」
モモはその嘘を問い質すことはやめにした。
あの噂が流れてからブランコ以外での会話のない二人には、こんな立ち話でさえも気まずい空気が流れてしまう。
もし誰かに見られたら、また噂が噂を呼ぶに違いないと恐れすらも感じていた。