*結ばれない手* ―夏―
[22]諦めと抗拒
「団長! 団長……!?」
モモが杏奈の悪戯な誘拐でがんじがらめにされていた休演日の午前。
暮は一通の封書を握り締め、団長室の扉を叩いていた。
「何だ~騒がしいの」
のんびり口調の団長がおもむろに引き戸を開いたが、暮の蒼白な表情は変わる様子もない。
「やっ休みの日にすみません! おれの部屋からこんなものが……!」
「ん? ……ふうむ。わしが受け取らないのを見越して、お前の所へ置いていったか」
暮が焦燥を抱えたまま団長の眼前に掲げたのは、凪徒の退職届だった。
「え? 団長は凪徒が辞めるつもりなのを知っていたんですかっ!?」
「まぁ~……辞める気はなくとも、出さざるを得ないだろうとは思っておったがの」
「え?」
既に握力でクシャクシャになった白い封筒の上下を引っ張り、団長の頬にくっつきそうなほど近付ける暮。
その顔も声も驚き慌てたまま、団長の発した言葉に疑問を投げかけた。
「とりあえず落ち着け、暮。この間凪徒にもご馳走した珈琲でも飲むか?」
「は……あ……」
相変わらずリズムを崩さない団長の調子にいささか唖然としながら、暮はそのどっしりした背中に続いて椅子に腰を降ろした。
☆ ☆ ☆
モモが杏奈の悪戯な誘拐でがんじがらめにされていた休演日の午前。
暮は一通の封書を握り締め、団長室の扉を叩いていた。
「何だ~騒がしいの」
のんびり口調の団長がおもむろに引き戸を開いたが、暮の蒼白な表情は変わる様子もない。
「やっ休みの日にすみません! おれの部屋からこんなものが……!」
「ん? ……ふうむ。わしが受け取らないのを見越して、お前の所へ置いていったか」
暮が焦燥を抱えたまま団長の眼前に掲げたのは、凪徒の退職届だった。
「え? 団長は凪徒が辞めるつもりなのを知っていたんですかっ!?」
「まぁ~……辞める気はなくとも、出さざるを得ないだろうとは思っておったがの」
「え?」
既に握力でクシャクシャになった白い封筒の上下を引っ張り、団長の頬にくっつきそうなほど近付ける暮。
その顔も声も驚き慌てたまま、団長の発した言葉に疑問を投げかけた。
「とりあえず落ち着け、暮。この間凪徒にもご馳走した珈琲でも飲むか?」
「は……あ……」
相変わらずリズムを崩さない団長の調子にいささか唖然としながら、暮はそのどっしりした背中に続いて椅子に腰を降ろした。
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