夏の魔法。
「ごめん、俺向こうに彼女いるから」







なんだもう予定埋まってるんだ。お幸せに。











涙は出てこない。悲しいかもよくわからない。



夏木そらが私を好きでも報われないのが他人事だったのに今はしんみりする。






「おい、」






「風邪ひくぞ。」









何も聞いてこない。察するなんてこのガキにそんなことができたなんて。





「……。」沈黙。




「あんたすきになるなんて。ありえないから。」




思わず口にしてしまった。八つ当たり。誰が見てもわかるのに。












本人にとってショックだったのも。傷ついたのが一瞬で分かった。でも訂正はしなかった。





「悪い。」






踵を返して去っていく。帰り道は危ないと思ったのか後ろで追いかけてくれた。







いつだってそうだった。





夏木の背中でさえ泣いてるみたいに弱弱しく見えて。






「勝手に切なくなってやがれ、バカヤロー」




なんて声が届かないことを悟った。


< 5 / 10 >

この作品をシェア

pagetop