お前を奪い返す〜俺様御曹司の独占欲が燃え上がる
第二章 こいつといると心が落ち着く
三年前、俺は記憶を辿って思い出した。

あの頃、仕事が忙しく、有給が溜まっていた。

親父がぶっ倒れる前だったから、有給を使ってアメリカに旅行に行った。

優雅な一人旅と言いたいところだが、寂しい一人旅だった。

一人の女性が黒人男性に引っ張って行かれる場面に遭遇した。

「助けて」

その女性は涙ながらに叫んでいた。

俺は高校時代、空手を嗜んでいたので、喧嘩に負けたことがなかった。

「Don’t do that!」

黒人男性は俺の姿を見て逃げて行った。

「大丈夫?」

その女性は目にいっぱいの涙を溜めて俺を見つめた。

「ありがとうございました、怖かった、死ぬかと思った」

「あのう、お名前を聞いてもいいですか」

「俺?神野隼斗、女が一人で出歩いてると危ないぞ、どこのホテルに泊まってるんだ、送っていってやるよ」

俺はその女性をホテルまで送り届けた。

その女性が美咲まりかだった。

< 11 / 70 >

この作品をシェア

pagetop