もしも君が昨日の私を忘れても


 「千香ちゃんこっちこっち」

私は今おばあちゃんの家に来ている
遊んでばかりで中々帰ってこない母、優しくて大好きだった父は交通事故で失い一人暮らしみたいな生活をしていた私は父の方のおばあちゃんに提案され一緒に住むことにした

 「この部屋ずっと使ってないから千香ちゃんが使っていいわよ」

 「ありがとう。」

薄暗くてほこりがかぶっているがそこそこ広さもあり私が借りるには勿体無いほどの部屋だった。

 「明日から新しい学校だけど大丈夫?」

おばあちゃんの家は元々住んでた家から少し距離があったので転校することになった
前行ってた高校は特に仲良い子とかいなかったし存在感があった訳でもないので転校することに関してはなにも思わなかった。

 「うん、大丈夫だよ」

私はおばあちゃんに笑みを浮かべた




 「このティントどう!?」

「えっ!可愛い!何それどこの??」

 「この女優ガチ可愛くね?」

「そうか?ww」

教室の中は賑やかだった。まさに私が嫌いな空気だ

 「はーい、席につけ〜」

 「とるちゃん!今日転校生来るんでしょ!?」

 「そうだ、今から紹介する。入ってこい」

みんなからの目線がすごい。あぁ、嫌だな

 「里音千香です。よろしくお願いします。」

精一杯の声を振り絞ってなんとか名前は言えた

 「え、?それだけ?好きなものとかないんですか〜!」

本当は音楽もアイドルも好き。でも何て言えばいいかわからない

 「ないです。」

そう答えてしまった。
あぁ、まただ、
教室が凍りついた。でもこの空気は慣れている。
私が話すといつもこうだ

 「あ〜、じゃあ席は倉谷の隣で」

 「え〜!ずるい!!なんで!?」

 「俺も彰人くんの隣がいい♡」

 「佐藤きもいwwww」

みんなが話している私の隣の人は倉谷彰人というらしい、話を聞いてる限り人気者だ

 「よろしくね、里音さん」

 「…よろしく。」

初めてこんな風に話しかけられた。



 「あっ、」

プリントが落ちた。しかも倉谷くん側だった

 「あ、はい!どうぞ」

 「ありがとう。」

倉谷くん、綺麗な顔してるな。昔母親から付けられたあざがある私は隣の席にいるのも申し訳なくなってくる


やっと帰る時間になり席を立とうとすると倉谷くんたちが話しかけてきた

 「ねぇねぇ!これからカラオケ行くんだけど一緒に行かない?」

 「そうそう!彰人が珍しく誘いたいって言うから〜!」

 「倉谷くんあり…」

 「倉谷くんって硬いなぁw彰人でいいよ」

 「じゃあ、彰人くん。ありがとう、でもカラオケとか興味ない」

感じ悪いなとは自分でも思った、けどカラオケに行くとか初めてだし歌がうまいとは思わないので断ってしまった

 「OK〜!またどこか行こうね」

彰人くんはそう言ってくれたけどパッと後ろを見ると女子達の視線が痛かった。

 「何あれ、感じ悪。せっかく彰人くんがカラオケ行こって誘ってるのに」

私に聞こえるギリギリの声量で話していた。
この時から私は女子達に目をつけられるようになった
どうやら悪口を言ってた1人がグループラインで言ったらしい。


「はぁ〜。」

昨日のこともあってなんだか学校に行くきになれなかったがおばあちゃんが心配するので仕方なく登校した

ガラガラガラ

 「ねぇ、あの子だよね彰人くんの誘いを冷たく断ったって子」

 「やば、自分の顔見てから言えよwどの立場だよww」

教室に入ると女子達が私を見てぼそぼそ何か言っている、それを私に聞こえる声で。
うるさいな。
みんなからの視線と声を無視しながら1番奥の席につく

 「里音さん!おはよう。」

 「、おはよう」

なんで昨日あんな断り方をしたのにまた話しかけてくるんだろう。

 「ねぇ彰人!そんなやつと話してないであっちいこ」

彰人くんと馴れ馴れしく話している黒髪の女の子は昨日グループラインで広めた犯人。水本 海風だった

 「ねぇ、何で彰人昨日あんな冷たい断られ方したのにまた話しかけるの??」

 「冷たい断られ方?」

彰人くんはそんなことあったっけ?みたいな感じだった

 「そうそう!昨日カラオケ誘った時!」

 「あーその時ねw」

 「もーう、彰人忘れっぽいんだから」

そんな話をしながら水本さんとその取り巻き達は私を睨んだ
昼食の時間が終わり、5時間目の準備をしていると海風と取り巻き達に呼び出された
場所は体育館裏



体育館裏に行った私は誰もいなかったので帰ろうとした

 「おい、」

後ろから声が聞こえたので振り返ると水本さんがいた

 「お前さ、プリント拾ってもらったのにありがとうの一言だけだし昨日の帰りだってせっかく彰人が誘ったのに何で興味ないとか言うわけ?まじでムカつく。」

 「……水本さんは彰人くんの彼女なの?」

こんなに言うならせめて彼女なのかなと思った。

 「は??そ、そんなわけないでしょ」

水本さんはめちゃくちゃ動揺していた

 「なんで彼女じゃないのにわざわざ私を呼び出して彰人くんの頼みでもないのにそんなこというの?」

 「うるっさい!何だっていいでしょ!!!」

バシンッ

 「っ、いた」

水本さんに思いっきり殴られた、意味がわからない。

 「うざいからもう彰人に話しかけないで!!」

なんで、水本さんに私が彰人くんと話したらいけない理由があるの?水本さんにそんな権利なくない?

 「大丈夫??痛くないの?それ」

あ、この声

 「、、大丈夫。」

彰人くんだった、もしかして見られた?どうしよう。自分のせいって思わせてしまったらやばい

 「そう、今来たから何があったかわかんないけど、とにかく保健室いこ」

 「う、うん。」

よかった。と思いながら胸を撫でた
そう思えたのは束の間だった。
そう、その光景を去ったはずの水本さんが見ていた

保健室に行き彰人くんと別れた
すると水本さんがすごく怒りながら入ってきた

 「ねぇ、話さないでって言ったよね。なんで、?もう知らない、明日からどうなっても知らないから」

その途端今までにない恐怖心を抱いた


次の日学校に行くと机の上に
バカ、男好き などと書かれていた
それを見た水本さん達はこちらを見て笑っていた
前の高校ではいじめられないように人とも少しは話すようにしたし、相手が嫌がらないように気をつけて生活していた。

 「彰人くんなんかと話さなければよかった」

そんなことを思って申し訳ないという気持ちなんかなく、後悔しかなかった。

「せーのっ!」

バシャ

「はっは!無様ww」

トイレに行っただけなのになんで水を浴びなきゃいけないんだろう。本当に最悪だ、
教室に戻るとみんながこっちを見て笑っていた。ただでさえ人に見られるのが嫌なのにみんなから注目されて笑われるのは苦痛でしかない。

 「大丈夫??」

1人だけ声をかけてくれる人がいた。彰人くんだ。なんで私が困ったときに絶対現れるんだろう、嬉しいけど今は迷惑だ。
私が話をしてしまうといじめがエスカレートしてしまう。そう思い無視をした。


ガチャ
 「ただいま」

「はい、おかえり」

ただいまと言って返事が返ってくるなんて何年ぶりだろう。そう思いながら昨日殴られた後のあざを見られないようにおばあちゃんの横を通り過ぎる。

 「千香ちゃん新しい学校はどう?」

「、楽しいよ」

本当は楽しくなんかないけどおばあちゃんには嘘をつくしかなかった


ガラガラガラ
 「おはよう。」

「wwwよく学校これるね」

もちろん3日目もこんな感じだった。

「はぁ、めんど」

そう言いながら席につくと

 「おはよう、里音さん」

彰人くんは蔓延の笑みで挨拶してきた
でも、話せない
話すと…

 「おはよう」

自分の意思より前に口が動いていた
なんでだろう、無視をすることに罪悪感を抱いていた

 ー昨日まではこんなことなかったのにー

どうしよう私彰人くんのこと·····好きなんだ

※※※

ついこの間俺の席のとなりに転校先が来た
背がスラっとしてて顔は良く見えなかったけど髪もサラサラで、初めてあんな綺麗な人を見た
まあ、いわゆる一目惚れをした

彼女の気を引きたくて隣の席を理由にして声をかけた。そっけなかったけどそんなことどうでもよく、帰りはカラオケに誘った

 「興味がない」

そう言われたけど行きたいけど申し訳なさそうな目をしてた
次の日も声をかけたけどやはり周りから見ると昨日の言動は悪くとらわれてたみたいで少し浮いていた
放課後、里音さんが海風に叩かれてるところを見た、海風は小さな頃からの幼馴染なのでそんなことをする子じゃないって事は知っているけどその場には明らかに海風しかいなかったし
叩く音も聞こえた。
その時はとっさに「今来たから」と嘘をついたけど叩く瞬間ははっきり見ていた

※※※

水をかけられたあの日から私はあからさまに彰人くんを避けていた
そのおかげか水本さんたちからも話すことはないけどいじめられることもなく、ふつーうな生活をしていた

 「おばあちゃーん!散歩行ってくるね!」

 「はーい気をつけなさいよ
    ばあちゃんも昼から家空けるからね」

 「はーい!行ってきます」

秋になって朝が気持ち良くなってきたので最近は散歩をしている
いつも行く公園は少し離れた場所にあって学校の人には絶対に会わないようなところだった

ーあれ?ー

見たことある後ろ姿があった

「あ、彰人くんだ」

右手に大きな袋を持って何をしているんだろう…
そう思っていると

プルルルル

電話?
「もしもし里音です。」

「千香ちゃんで間違いないですか⁉︎」

「はい」なんで焦ってるんだろう

「おばあちゃん出先で倒れたみたいで、今桜田病院にいるんですよ!」

ガンッ

驚きで手に持っていたケータイを思いっきり落とした。
やばいっ!そう思った頃には彰人くんに気づかれていた

「だ、大丈夫?どうしたの」

「お、おばあちゃんが倒れたって」

どうしよう、どうしようどうしようどうしよう!

「落ち着いて、この近くなら桜田病院かな?」

「う、うん。」

「じゃあ今から俺も行くとこだったから一緒に行こう。」

「ありがとう」

行くとこだったから·····?誰かご家族でも入院しているんだろうか。

「あの〜里音です。おばあちゃんは····」

「里音千香さんですね、おばあさんはこちらです·····あれ?倉谷さん。今日診察でしたっけ?」

「こんにちは吉田さん。あれ、違いました?」

???知り合いなのかな

「あ、とりあえず里音さんはこちらへどうぞ」

「はい。分かりました」
まだ彰人くんのことが気になるがとりあえずおばあちゃんの安全を確認しに行った

ガラガラガラ
「おばあちゃん!大丈夫!?。」

「あはは、大丈夫だよ千香ちゃん。少し腰を捻ったみたいでね、今日だけ病院で過ごすよ。ごめんね帰れなくて」

「いいよ!そんなこと、とりあえず無事でよかった·····」
すごく安心した。おばあちゃんまで失ったらどうしよう。そういう不安で溢れていた

「今日はとりあえず千香ちゃん1人でお願いね。」

「うん、分かったおばあちゃんも安静にね」

そう告げておばあちゃんの病室から出ていった。

帰ろう·····そう思った時ひとつの部屋から声がした

「最近どうですか?記憶力の方は、昨日の晩御飯覚えてますか?」

「昨日の晩御飯ですか·····全く覚えてないです。最近前よりもまして低下してる気がします。」

この声、彰人くんだ。記憶力?なんの話し……?
そう思いつつその場を去った

※※※

前よりもまして低下してる気がします。」

まずい、昨日の晩御飯どころか今日の朝ごはんまで覚えてない。どうしよう

「とりあえず薬は出しておきます。それでも治らないようでしたらもう一度お伺いください」

「はい、分かりました」
(このことも覚えてるだろうか……)

※※※

「彰人くん。ちょっといいかな」
水本さんたちにバレないように私は彰人くんを屋上に呼び出した

「どうしたの里音さん」
昨日帰り際に聞いてしまったこと、正直に話そう。

「あの、昨日病院一緒に来てくれて·····ありがとう。その帰り際に聞いちゃったんだけど記憶力って·····?」

「あー、聞かれてたの。ごめんね里音さんだから話すんだけど昔事故で頭うっちゃって、その日からどんどん記憶力が無くなっていくの。今では朝ごはんも覚えれないくらい」

「そ、そんなんだ。ごめんねそんなこと聞いちゃって。」
事故の話とか絶対思い出したくも無いだろうし、人に話すなんてそれよりも嫌だろうに、申し訳ないことをしてしまった。

「いいよ。過ぎたことだし、後·····この場で言うことじゃないと思うんだけど。」
「里音さん·····いや、千香が転校してきた日、実は一目惚れして。なんて素敵な人なんだろう、なんて綺麗な人なんだろって思って、·····それで仲良くなりたくて沢山話しかけたせいで海風に叩かれたりしちゃって、」

「え!?叩かれてるの知ってたの·····?」

「うん、それは本当にごめんと思ってる。言えばよかったって」
「そ、それより、俺千香のことが好きなんだ!もちろんこの事も明日には忘れてしまうかもしれない。けど千香をすきって気持ちだけは変わらない!良ければ俺と付き合ってほしい。」

え、付き合う、彰人くんと?
本当に、?
「わ、私も好きだった。ずっと、話しかけてくれて嬉しかった!」
うわ、言っちゃったよ。

「ほ!本当に!?嬉しい!どうしよう」
「付き合って、くれるの?」
本当にこんな私でいいのかな、けど、!
「はい!よろしくお願いします」

「うわ!どうしよう〜嬉しい〜」
彰人くん、はねて喜ぶの笑

でも·····彰人くんは事故の話も記憶の話も全部してくれた。のに、私まだアザのこと話してないし、隠してばっかだ。彰人くんなら大丈夫!言おう!

「あ、彰人くん·····」

「ん?」

「実はこれ」
シュルッ
アザを隠していた包帯を外した

「昔お母さんに殴られてついたあとなの、醜いよね、本当はずっと誰にも言わないつもりでいたんだけど彰人くんは事故の話も記憶の話もしてくれたのに私は何も言ってない。彰人くんなら大丈夫、かなって·····」

さすがにこんな大きなアザ引かれるかな。

「ありがとう。」
「え?」
「話してくれて、ありがとう千香」


予想外の返事に私は泣きそうになった。



┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

「そうだ千香!今週の土曜デートしない!?」
早い。早すぎる

「も、もう?どこ行くとか決めるのに時間かからない?」

「それがですねジャーン!遊園地のチケットを貰ったのです!」
そんなのどこで·····
聞こうと思ったけどあまりにも嬉しそうなのでやめといた

「わ、わかった。じゃあ土曜日の〜10時ぐらいかな?てか千香呼びになってるね彰人くん」

「10時ね!おけおけ!千香も彰人でいいのに」
付き合い始めた途端きゅーうに馴れ馴れしくなったな。

※※※
遊園地のチケットはお母さんに貰った。お手伝いをして必死に頼み込んだ。絶対に千香と行きたかったから。

「10時、10時、千香と遊園地。」これをメモしておかないと全部忘れてしまう

あ〜楽しみだな

俺は浮かれていたため大事なことをメモに書き忘れた。そう、日にちだった

※※※

「あ!おばあちゃん、おかえりなさい」

「ただいま千香ちゃん。昨日は大丈夫だった?」

「うん!おばあちゃんも、元気?」

「一日でだいぶ元気になったわよ」

「良かった!そうだ、今週の土曜日お出かけ行ってくる、ね?」

「分かったわ、彼氏かしら?」

「あ!おばーちゃん!!」

「うふふ、楽しんでらっしゃい」

最近引っ越してきた時よりかはだいぶおばあちゃんと話せるようになった。


当日、土曜日ーーー

「おばあちゃんー!行ってきます!」

遊園地は近くにあるため待ち合わせの20分前に家を出た。

この遊園地はデートスポットですごく有名な場所だった。大きな柱時計が集合場所


10時 11時 14時


17時

ー本日は当遊園地にご来場いただき誠にありがとうございます。当遊園地は17時30分が閉園時間となっております。まだ園内にいらっしゃるお客様は速やかにおかえりください。本日はー

来なかった。彰人くんから誘ってくれたのに、メモもするって言ってたのに、どうして。
 

月曜日、私は彰人くんになんで来なかったのかを聞きたくて早く学校に行った。


「あ、彰人くん!」
あれ、私変なこと言ったっけ。彰人くんがすごく不思議な顔をしている

「あれ、千香?朝から珍しいねどうしたの」
珍しいねって、なんで何事もなかったかのように話すんだろう。


「後で、話があるから昼休み屋上来て。」

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