素敵な天使のいる夜にー4th storyー


「なあ、大翔。一体何があったんだ。」


大翔は、沙奈のことを寝かせてから戻ってきた。


「実は、沙奈の通う大学に講師としてうちの小児科の加須見先生が来てるんだ。」


「え?」


「また…何で…」


「沙奈が発作を起こして、最初に処置をしたのもその先生だった。


加須見先生と、沙奈は直接的な血の繋がりはないけどやっぱり加須見先生自身が沙奈の父親との血の繋がりがあるからその事を恐れている…

加須見先生に対して恐怖心を抱いていることもそうだけど…


父親に居場所を知られることが沙奈の中で1番恐怖に感じているんだと思う…


父親に刺されているから…尚更…」



大翔は厳しい表情をしていた。


沙奈の父親は今どうしているのかは分からない。


だけど、沙奈の父親はもう外に出られる状態ではないはずだよな…


あまり思い出したくは無いあの時の記憶。


沙奈の事件に関わってくれた警察官は、沙奈の父親を保護した後、執行猶予中に事件を起こしたから2度と留置場から出てくることは厳しいと話していた。



沙奈に直接的な危害が及ばないとは思うけど…


父親のことでひどく怯えているとしたら放ってなんておけない。


「紫苑…。沙奈はきっと不安を抱えながらこれから大学へ通うことになるかもしれない…

今は、発作も落ち着いて体調も改善してきたから電車通学を許していたけど、しばらくは沙奈の送り迎えをしていこうと思う。

だけど、勤務上どうしても当直とかがあると難しい時があるから、その時はまた紫苑と翔太の力を借りてもいいかな?」




「あぁ。当たり前だ。沙奈に少しでも異変があったら直ぐに教えてほしい。」



「もちろん。それから、2人が大丈夫だったらなるべく沙奈のことをみていてほしいんだ。

あんな様子を見てから、沙奈がまた1人で抱え込んで心を閉ざしてしまわないか心配なんだ。

もう、沙奈に1人で抱え込ませたくない。

家のスペアキーを2人に渡しておくから、俺がいない時沙奈のそばにいてほしい。」



沙奈が病気になってから、沙奈と向き合う時間が増えて病気になる前よりかは話せるようにはなってきている。


沙奈自身も俺達を信じて、少しずつ心を開いて悩みや不安なことを話をしてくれるようにはなったけど……


出会った頃から1度も消えたことの無い沙奈の中にある暗い影に染っていくのを何度も見てきた。



そんな沙奈が心配で、俺達はそれを知っているから1人にしておくことが何より怖かった。


大翔の言うことは、俺やきっと翔太も同じように思い感じていることだから。



「大翔先輩、俺自身も沙奈のこと1人にしておきたくないので…

沙奈と一緒にいられる時はそばにいさせて下さい。」


「俺や翔太も、勤務確認していつでも沙奈のそばにいられるようにするから。

それでも今は、1番近くにいられるのは大翔だから…

だから大翔。沙奈のこと頼むよ。」


本当なら沙奈の1番そばにいたいのが本心だけど。


今、1番そばにいられるのは大翔だから。


沙奈に何かあった時にすぐ駆けつける。



可愛い妹が、これ以上1人で苦しむ姿を見たくないから…
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