素敵な天使のいる夜にー4th storyー
『休学』をする選択肢が未来を閉ざす訳ではないと思う。
そういう選択だって必要なこともあるから。
ただ、沙奈がその選択を迫られきっと受け入れることはできないと思った。
高校の時だって、自分が留年する可能性があるかもしれないと心配しながら、自分を責めてきた姿を側で見ていた。
「神代君。落ち着いて。
何も、彼女に休学をしろなんてお願いをしにきたわけじゃないんだ。
彼女が休んでいた分の講義は少しずつ私が教えていくから。
七瀬さんに伝えてほしいんだ。
休んでいた分の講義やテストは4限が終わった後に少しずつ行っていくことを。
私自身、彼女には皆んなと同じように学んでほしいと思っているから。
それに、沙奈ちゃんのことはここに入学する前から知っているからね。」
川崎教授はそこまで話すと寂しい表情をしていた。
「沙奈のこと、以前から知っていたのですか。」
「ああ。君自身も、七瀬君兄弟がしばらく大学を休んでいたこと知っているだろう。
七瀬君兄弟は、沙奈ちゃんを受け入れる準備をするために大学を休んでいたから…
その時は、補修という形ではなく自宅まで講義資料を届けて七瀬君の自宅で教えていたんだ。
その時から、彼女のことは知っている。」
川崎教授は、七瀬兄弟に引き取られたばかりの沙奈を知っていたのか。
きっと、ずっと前から沙奈のことを知っていたからここまで気にかけてくれたんだろう。
「無理をしてしまう時もあるし、まだまだ心配なところもあるけど、彼女がここまで成長して瞳に光を取り戻してくれたことがたまらなく嬉しかったよ。
まさか、こうやって再会できるとは思っていなかったから、この縁は大事にしたいと私自身も思っていたんだ。
だから神代君。七瀬君と一緒に彼女のことをしっかり見守って支えてほしい。」
「もちろんです。大切な人を守るためなら何でもする覚悟です。」
「そうだね。昔から君も責任感は人一倍だから安心できるよ。
それじゃあ、今日は時間を作ってくれてありがとう。
沙奈ちゃんにもよろしく伝えてね。」
沙奈から、自分達を担当してくれた教授が沙奈達の担当になったとは聞いていたけど。
まさか、まだ幼かった頃の沙奈を知っていたなんて思いもよらなかったな。
それに、川崎教授は沙奈のことを分かってくれているから安心できる。
川崎教授に頭を下げてから、午後の診察へと病院へ戻った。