素敵な天使のいる夜にー4th storyー
ーSide 大翔ー



沙奈からの返信はなしか…



朝早くに沙奈へ送ったメッセージに、既読がまだついていない。




そんな沙奈が心配で、慌ただしい診察ラッシュが終わり、昼休憩に入ってから俺は紫苑に電話を掛けた。




本当なら、この目で沙奈の状態を確かめたいからすぐにでも沙奈の家に向かいたいけど、今日は平日で患者も多いし午後の診察時間まで仕事がたくさん残っていた。




外来だけでなく、呼吸器、循環器内科の病棟に入院している患者も受け持っているから空いた時間で看護師に指示を出さないといけない。




残業で残るくらいなら、今できることやっておいてしまいたいからな。





「紫苑、沙奈の具合どう?」




「10時頃、熱を測ったら37.8℃あった。


平熱が低いから、相当辛いと思う。


沙奈は、身体が怠いだけって言ってたけど喘鳴も少し出てるからかなり辛いと思う。」




「そうか…。今日の帰り、沙奈の様子みたいからそっちに寄っていってもいいかな?」




「もちろん。沙奈も、口には出さないけど大翔に会いたがっていると思うから。


元気付けるためにも、そうしてくれないかな。」




「分かった。」




37.8℃



厄介な数値だな…




これ以上上がらなければいいけど…




沙奈の少しの無理は、いつも自分を苦しめてしまうからな…。




大学受験期の時も、寝る間も惜しんで勉強していたくらいだからな…。




あんなに小さい体に、それだけ負荷がかかれば熱が出たっておかしくない。




病気で、入院していた期間も含めて沙奈はその遅れを取り戻すために、診察の待ち時間や移動時間もずっと勉強をしていたと紫苑から聞いた。




当時の沙奈には言わなかったけど、相当大学受験の合格ラインに入るのは難しかったくらいだ。




まだ、合否が出ていないからはっきりとは言えないけど、沙奈が持ち帰ってきた問題集で採点して、きっと上位で合格できる点数を取れていた。




相当な学力や、才能、努力がないとあそこまでは追いつけなかったよな…。




「頑張ったんだな…」




「また、沙奈のことを考えているんですか?」




「冨山さん。」




「沙奈のこと、心配なのは分かりますけど診察に身が入っていないようですね。」




「ああ。悪い、冨山さん。次の患者、呼んでくれないか?」




「…分かりました。」



いつも表情の固い冨山さんは、少しだけクスッと笑い診察室の扉を開けて、次に待つ患者を中へ入れてくれた。
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