素敵な天使のいる夜にー4th storyー
ーside 大翔ー


朝から少し重い話をしてしまった。


それでも、沙奈には今伝えなければ後悔すると思った。


沙奈は沙奈のペースで少しずつ変わってくれている。


前よりも抱え込むことは無くなったけど、時々沙奈が無茶をしているかもしれないと思うといてもたってもいられなくなっていた。


沙奈の抱えている苦しみの全てを受け止めたいと、何も心配せず預けてほしいといつだって真摯に願う。


だけど、沙奈の気持ちを聞いて少し安心した。


病院の駐車場に到着すると、スーツを身に纏った実習生がたくさんいた。



駐車場について、沙奈が車から降りると真っ先に駆け寄ってきてくれたのは瑛人君だった。


「沙奈!大丈夫か。」


「瑛人君。確か、沙奈と同じグループだったよね。沙奈、あまり体調が良くないから沙奈のこと気にかけてほしい。」


「もちろんです。絶対、沙奈には無理させませんから。」


「ありがとう。瑛人君。沙奈、くれぐれも無理はしないこと。我慢しないで必ず周りに話すこと。」


「うん。」



沙奈は、俯きながらも頷きながら返事をしてくれた。



そんな様子を見ると、休ませてあげたい気持ちが強くなる。


大切な人が、自分の身体を奮い立たせながら無理をしている姿を見るのは未だに慣れない。



沙奈のこととなると余計…。


瑛人君に沙奈を託してから、沙奈の実習グループを担当してくれている川崎教授のもとへ向かう。


「神代君。おはよう。」


「おはようございます。あの…」


「沙奈ちゃんのことだよね。」


「はい…。」


「顔色、あまり良くないね。呼吸も少し苦しそうだから車椅子で酸素投与しながらの実習になるかもしれないな。」



沙奈から視線を戻し、川崎教授は険しい表情でそう言った。



「そうですね…。今も酸素飽和度も90%ギリギリくらいです。なるべく早めに酸素投与しながら、実習に望んでほしいと思います…。


本当なら、休ませてあげたい…。それが正直な気持ちですが…。


今日1日もつかどうかも分かりません。


ですが、できるだけ沙奈に皆と同じように実習を受けてほしいと思ってます…

ずっと、この実習に向けて頑張ってきたのを見てきたので…。」


「実習中は、沙奈ちゃんのこと私に任せて。何かあったら連絡するから。


必ず、無理はさせない。」


「よろしくお願いします。」


川崎教授に頭を下げてから、知り合いの精神科医に連絡をとった。
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