素敵な天使のいる夜にー4th storyー
ーside 沙奈ー



学生挨拶が終わってから、オリエンテーションが始まった。


担当してくれる指導医から、酸素投与をされ車椅子に揺られながら病棟のことを学ぶ。



指導医は、大翔先生との繋がりがあって私のことを気にかけてくれている。


「それじゃあ、病棟のオリエンテーションはこれで以上になります。


1度説明はしましたが、1日では覚えきれないかと思うので分からないことがあったら周りのスタッフに聞いてください。


それでは、それぞれ担当患者さんのもとへ向かい挨拶と情報収集に励んで下さい。」



私、こんな格好で向かってもいいのかな…



患者さんと間違えられそうな気がするけど…


それより、こんな状態で1人でどうにかできるかな…


「七瀬さん。」



「…はい。」



「大丈夫よ。私がそばにいるわ。


酸素投与してから、少しだけ顔色は改善したけど無理はしないでね。


患者さんのことを優先して考えてしまいそうなあなただけど、今は自分の身体のことも最優先に考えてね。」



「…先生…」


苑田先生に、そう声をかけられ気づいたら涙が溢れ出ていた。


あれ…


どうして私、泣いているんだろう…


「…七瀬さん…。

この実習に向けて、たくさん頑張って来たのよね…

七瀬さんが、最後まで実習を受けられるように全力でサポートするから…」


苑田先生は、そう言いながら優しく背中を撫でてくれていた。


その温かい温もりと、先生の言葉を信じ私は苑田先生と一緒に担当患者さんのもとへ向かった。



深呼吸をしながら、自分に大丈夫と言い聞かせ病室の扉を開ける。


「おはようございます!」


私が抱えていた不安を吹き飛ばすくらい、その彼女は明るく挨拶をしてくれた。


「彼女は、今だいぶ症状も落ち着いて退院の目処がついてきたところなの。


おはよう。栞ちゃん。今日から担当してくれる学生さんよ。」



「私は、夏村栞。よろしくね。」


「七瀬沙奈です。よろしくお願いします。」


「沙奈ちゃんね。沙奈ちゃん、私より体調悪そうだけど大丈夫?」


「あっ…えっと…」


「沙奈ちゃんは持病を持ちながら、医師免許を取るために頑張って大学や実習を受けているの。

私がそばにつきながらの実習だから栞ちゃんも沙奈ちゃんも心配しないこと。」


「はい。」


虹夏先生は、大翔先生や紫苑と大学時代からの付き合いと聞いていた。


これ以上、体調が悪化したくないけど全く知らない医者よりも万が一のときのことを考えると安心できる。



虹夏先生の優しさに助けられていた。
< 23 / 23 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

すてきな天使のいる夜に~3rd story~

総文字数/47,044

恋愛(純愛)36ページ

表紙を見る
たった一輪の綺麗と呼ばれる花を。

総文字数/34,007

恋愛(純愛)27ページ

表紙を見る
金木犀

総文字数/59,115

恋愛(純愛)46ページ

表紙を見る

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop