素敵な天使のいる夜にー4th storyー
大学生
それから、月日が流れ沙奈は晴れて大学生となった。
周りの学生からは、沙奈の容姿が好評で毎日声を掛けられていると瑛人君が心配していた。
今は、瑛人君や音羽ちゃんが傍にいてくれるから大丈夫だろうけど。
内心、そんな話を聞いてそんな輩たちを許せない自分もいる。
「沙奈、体調大丈夫か?」
毎朝、聴診をして沙奈の体調を確認するのが日課になっている。
沙奈が高校を卒業してから1ヶ月。
食事療法も点滴治療も、沙奈が頑張ってくれたおかげで今こうして沙奈の1番近くにいることが出来ている。
「沙奈の体調も安定したから大丈夫だろう。」
沙奈を含め、紫苑と翔太と話し合いをして結婚を前提とした同棲を認めてくれた。
その時の沙奈が見せてくれた1番の笑顔は一生かけても忘れられない。
「うん。大丈夫だよ。」
「沙奈、変な奴に声をかけられても着いて行ったらダメだからな。」
「大丈夫だよ。音羽も瑛人も一緒にいてくれるから。」
「そうか。今日は診察の日だけど大学終わったら連絡して。
すぐに迎えに行くから。」
「でも…先生が大変じゃ」
「俺がそうしたいから。」
「ありがとう。」
俺の言葉を聞いて、安心した表情になった沙奈は朝の支度の続きを始めた。
それから、沙奈のことを大学に送り届けてから病院へ向かった。
「おはよう。大翔。」
診察の準備をしていると、最初に声をかけてきたのは紫苑だった。
「おはよう。」
「沙奈の体調、大丈夫そうかな?」
「あぁ。今は喘鳴もないし、顔色もいいよ。
今までの治療を頑張ってきてくれたから少しずつだけど体調も回復して元通りとまではいかないけど病気になる前の生活に近づけているような気がする。」
病気が見つかる前のように、完全に健康な暮らしを送ることは難しいだろうけど。
大学に上がってから、幸い授業もちゃんと受けられている。
「そうか。それなら安心だ。」
今までの紫苑は、いつも寂しそうな表情をしていたけど、沙奈のいない暮らしに慣れてきたのか今は安心したように微笑んでいた。
それでも…
「まあ、大翔に任せておけば沙奈は大丈夫だと思うけど……
それでも、俺たち2人に会いたがっていたら直ぐに迎えに行くからな。」
冗談交じりなのか、半分本気なのか。
まだ、紫苑や翔太は妹離れ出来ていない様子がうかがえる。
それだけ、2人は沙奈を今まで大切に育ててきたんだな。
そんな2人と沙奈を見ていると微笑ましく思う。
「もちろん。沙奈の様子、たまに見に来てあげて。
沙奈自身も時々、切ない表情をしている時があるから。」
沙奈も、時々寂しそうな表情をする時がある。
それほど沙奈も、2人を信頼していて離れて暮らしていることに少しだけ戸惑いを感じているんだと思う。
まあ、俺と沙奈の2人での生活は始まったばかりであってそう焦ることはないと思っている。
決して会えない距離じゃないんだから。
「そうか。ありがとう、大翔。」
「いいんだよ。翔太にもそう伝えておいてくれ。」
「あぁ。」
それから俺達は、始業時間となり忙しい1日が始まった。