新・Sなお前とヤケクソな俺
『…………』
「憂?」
俺は先輩の腕を掴み、中に入れて急いで玄関を閉めた
『バカ!!誰かに見られたらどうするんだよ!』
びっくりし過ぎて思わず先輩をバカ呼ばわりしてしまった
「バカ……」
『ご、ごめん』
「いや、それでいいよ。もっと素の憂になって欲しいから……あーやっぱり来て良かった」
『ちょっ先輩』
ぎゅーっと抱き締められた
げ、玄関が狭い……
あっでも先輩の匂いだ……落ち着く……じゃなくて
『謹慎中!不必要な外出はダメだってば』
「不必要な外出じゃないもん、俺には必要な外出だもん。ちょっとだけ、ね?」
『屁理屈じゃんか』
「屁理屈に関して俺は最強だよ?」
『……まぁいいや、ここまで来ちゃったんならもう一緒だ。取り敢えず上がって』
「ありがとう」
先輩を部屋の奥へ招き入れた
だけど内心もう心臓がバックバク状態
俺が電話しながら帰ってる時、先輩も電話しながらこっちに向かってくれてたのか
さっきまで携帯を通して聞こえてた声がすぐそばで聞こえる
どうしよう……めっちゃ嬉しい
「さて、あっちの森は……あった」
一瞬で見つかった
「凄く分かり易い場所に置いたんだね」
『まだ全種類飾れてないけどね。途中で先輩が来たから……』
「会いたかった?」
『……うん』
「怒ってたくせに素直だね」
『……』
「ふふ、可愛いなー」
俺の頭を撫でて先輩は台所へ……
え、何で台所?
「やっぱりまだ開封してなかったんだね。リビングになかったからここだと思った」
『え?だってそれ先輩のじゃん』
大分前に先輩が大量に購入してた調理器具達
存在をすっかり忘れてた
「憂んちで使う用で買ったやつだから開けてくれてて良かったのに」
『え、だって先輩置いといてって言ったっきりだったし人の物勝手に開ける訳には……』
「あれ?言わなかったっけ?……そっかそっか、ごめんねー言ったつもりになってたみたい。これは憂んち用だから憂も自由に使ってくれて構わないんだよ」
『そうなの!?ってか俺んち用って……俺自炊しないって』
「知ってるよ。だからこれは俺が憂んちで使う用なの!」
……訳分からん
『えーっと、つまりこれはこの家の調理器具って事?』
「そう!」
ま、マジっすか……や、普通にありがたいけどビビる
「せっかくだから何か作って帰ろうか?」
『食材も何もないからいいよ。ありがとう。あと俺弁当買って帰ってきちゃったし』
「そう?」
『うん』
「……そっか」
そんな残念そうにされると何かめっちゃ悪い事しちゃったなーって思っちゃうじゃんか
「明日学校だし疲れてるだろうからもう少ししたら帰るよ。顔見に来ただけだから」
『え?あ、うん』
いざ帰るって言われたら物凄く寂しくなる
不必要な外出はダメだと言いつつまだ一緒にいたいって思うのは本当に矛盾してる
「……じゃあ帰るね」
『うん』
「明日学校頑張ってね」
『うん』
「今日は早く寝るんだよ?」
『うん』
「尾澤に何か言われても無視すればいいからね」
『うん……って無視出来ないって』
「あははっ今うんって言った」
『むむむ……』
「はぁ、寂しいな」
玄関でまたぎゅーっと抱き締められた
『……せ、先輩っ……っ!』
「んー?」
首筋にキスされたからびっくりして体が強張ってしまった
そして先輩が俺の唇を指でなぞった
『ま、待って』
「待てない」
『んんっ』
頭を引き寄せられ、唇が重なった
『……っ』
それと同時にいきなり舌を絡められた
『先輩っ待っ……んんッ……っ』
「……」
やばっ……
先輩の腕にしがみついたけど激しいキスについていけない
『んっ……あっ…んんっ』
激しいけどとろけるような甘いキスに頭がまたぼんやりして来てしまう
『はぁっ……あっダメッ……んっ』
体の力が抜けて足がガクッてなったのを先輩が支えてくれた
「……憂、その声はちょっとやばい」
『え……?』
「気持ち良かった?」
『ん……』
「可愛い」
『先輩、激し過ぎ……』
「そう?こんなの序の口だよ」
え……えええええ
俺の頬を優しく撫で今度は触れるだけの優しいキス
「好きだよ」
『うん……』
「じゃあまた明日ね」
『ん……』
玄関の扉を開け、先輩はゆっくりと部屋から出て行った
や、やば……
顔が熱くなり過ぎて両手で覆い隠した
俺、先輩の事好き過ぎる
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