幼馴染が××すぎる。
犯人と見せかけて違うパターンというミステリーの定石にも、開始15分で簡単にのっかって騙されてしまう。

リュック全開でダッシュして全荷物を道に陳列した回数は数知れないし、

全面ガラス張りの所を通れると思って普通に突進していくし、

イチャイチャ中のカップルの女の子の方が「あ…いや…♡」って言ってるのを聞いたら「嫌がってんだろ!」って割って入っちゃうし、

今年の干支を聞いてみると真顔で『豚』とか言う。



正真正銘の、アホである。



「ええぇぇぇえぇええ!!!!
コイツが犯人!?めちゃくちゃいいやつだったじゃん!ハジメと仲良しだったじゃん!!」

「ほんとだね」

えらく真剣な眼差しを画面に送るキヤの横顔は、『黙っていればかっこいい』と言われるだけのことはある。

物語の終盤でグスグス言い出したキヤにわたしはそっと箱ティッシュを差し出した。

キヤがそれをスボッと取るのを感じながら、私はカラカラの目で流れゆくエンドロールを眺める。


「なぁ……お前、心持ってるか?」

キヤがカスッカスに乾燥する私の顔を覗き見て、元々大きな目をさらに大きくした。

「あるよ。でもこの程度じゃ動かないなぁ」

「この程度…!?」

「あ、ごめん。」

本音がはみ出してしまった。
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