幼馴染が××すぎる。
幼馴染が不機嫌すぎる。
高く上がった白いボール。
「チャンボ!」
私は体のあらゆるバネを使ってそれにくらいつこうと、高く跳ぶ。
そしてそのボールを朝のキヤの顔に見立てて、
勢いよく、ぶっ叩く。
ズバァン!!と小気味良い音と共に着弾した、キヤの顔。
「ナイスキー!」
相手コートの先輩たちが動けないのを見て、私は心の中でガッツポーズする。
「おーし休憩入るぞー!水分補給しっかりなー!」
コーチの言葉に部員が一斉に返事して体育館端に移動する。
「なんか今日の姫、気合い入ってるね」
ポニーテールを揺らして声をかけてきたのは同期の芳賀さくら。
この部きっての名リベロであり、この部きっての女子力を持つ通称『フェロモン』。
「…そう?」
私は悟られないようにタオルで汗を拭って、スポドリをゴクゴクと流し込む。
「なんかムカつくことでもあった?」
ギクリ。
さくらは妙に鋭い。
「…察しのいい子は嫌いだよ」
「いやーんイケメンにそんなこと言われたらドキドキしちゃう♡ねーねー何があったの?クールな姫がそんな風になるの珍しいじゃーん」
「…」
朝、私の作った卵焼きを食べてまずそうに舌を出すキヤを思い出して、右手のペットボトルがメキメキと鳴った。
「ちょっと焦がしただけなのに…」
思わずぼやいて、さくらがキョトンとする。
「…なんでもないよ?」
私が誤魔化すようにさくらに爽やかスマイルを向けていると、突然体育館の扉がガガ、と開いた。
…ん?