幼馴染が××すぎる。
「…はいはい、生姜焼きね。あのね、キヤ。私たちが今一緒に住んでることは言わない方がいいと思うんだ。」


「なんで?」


「だって、私たちはただの幼馴染だからなにもやましいことはないけど、周りからしたら普通、男女が同じ家に住んでたら、そういうことだって思われちゃうよ」


「…そういうことって?」


「えっ?…とー、」


キヤの声に少しの不機嫌が混ざり始めた気がして、ちょっと言葉に迷う。


「つ…、付き合ってるんじゃないか、とかさ…」


「…」





…キヤから返事が返ってこない。



蝉の音が大きくなった。



キヤの少し力んだ眉間から

わずかに揺れた瞳から

微かな動揺が伝わってきて、胸がざわついた。



ジリジリと照りつける太陽が、私の背筋に汗を伝わせた。



「あ、はは…。あー、キヤと私が付き合うとかありえないけどさ、周りからしたらー…」

「なんで?」


ヘラヘラ言う私に、キヤが言葉をかぶせた。


「なんで俺らが付き合うのはありえないんだよ」


「え…?」



キヤのまっすぐで曇りない目には、必死で何かを取り繕う私が映っていて

キヤは、明らかに怒っていた。



「……はー…」



硬直する私に、今度はキヤがため息をついた。


「…分かったよ。一緒に住んでること言わなきゃいいんだろ?」


キヤは踵を返して私に背を向ける。


「今日の買い出しは俺行ってくるから。生姜焼きのレシピ探しとけよ。じゃ。」


そう言い残して、キヤの背中はどんどん遠くなっていく。


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