押しかけ婚〜あなたの初恋相手の娘ですが、あなたのことがずっと好きなのは私です
一ヶ月後、真奈さんが帰国した。
「友梨亜ちゃん、久しぶり」
「真奈さん、お帰りなさい」
学校から帰るとちょうど荷物を運んできた業者さんが帰るところだった。
急遽彼女の帰国が決まったため、隣の大澤家の家具などをそろえる必要があった。
私の住んでいる家はどちらかと言えばデザイナーブランドのような家具でシックに統一されている。
私の部屋にはアイドルのポスターなどはなく、ぬいぐるみのようなメルヘンなものもない。
そこはしいちゃんとも趣味が合い、リビングもシンプルだけど座り心地の良さを大前提にしたソファを置いている。
全体的に白と黒、色はあってもせいぜい差し色程度で統一している。
真奈さんの趣味はもっとカントリー風で、木の温もりを感じさせる。
「学校はどう?」
まだ段ボールの積み上がった部屋で、私は真奈さんとお茶を飲んでいた。真奈さんは親子と言うより年の離れたお姉さんって感じ。
「普通です」
「普通って・・・友梨亜ちゃんならもてるでしょ」
「興味ありません」
「相変わらずね。まだ真嗣のこと、好きなの?」
愛情表現が豊かで、夫婦同伴の機会の多い外国にいたせいか真奈さんは恋愛に対してすごくオープンな人だ。
そしてすごくそういうことに勘が働く。
「わかります?」
「前みたいにあからさまに好き好きって言わなくなったけど、わかるわよ。あんまり表に出すと警戒するものね」
「そうなるなかと思って、なるべく言わないように努力はしているんです。でも、そうすると、私の熱も冷めてしまったんだと思われているようで、それはそれで複雑なんだけど」
「自分の息子のことをそこまで想ってくれる人がいるのは嬉しいけど、そろそろ他の人にも目を向けてもいいんじゃない?もしそれで、やっぱり真嗣がいいと思ってくれるなら、私はその方がいいな」
「でも、好きになれないかも知れないのに、相手に悪い・・・」
「最初にお試しでもいいならって、説明するのよ。それでもいいって言った相手とつきあえばいいの。女は恋で磨かれるんだから」
「ずっと孝嗣おじさんひと筋の真奈さんからそんな言葉が出てくるなんて・・・」
「今好きなのは孝嗣(たかつぐ)だけど、彼と会う前にも何人かとお付き合いしていたわ。だから孝嗣が一番だってわかったの。それに、俳優とかかっこいい人はかっこいいと思うもの。トキメキは必要でしょ?」
「お付き合い・・・具体的には何人?」
「あら、それ聞いちゃう? そうねえ、初めて彼氏が出来たのは中学1年だったかしら・・・」
「荷物も片付けないで、何の話をしているんですか」
不意にしいちゃんの声がして驚いた。振り向くとしいちゃんが玄関からまっすぐ繋がる廊下に立っている。今帰ってきたばかりでカメラの入ったバックも肩にかけたままだ。
「あら、真嗣、いつの間に帰ってきたの、早かったわね」
え、いつからそこにいたの? 今の話聞いてた? どこから?
「荷物の片付けを手伝おうと早めに帰ってこいと電話してきたのはお母さんでしょ。なのにおしゃべりなんて・・・これじゃあいつまで経っても終わりませんよ。友梨亜もまだ制服のままじゃないか。鞄も置いたままで・・・」
リビングの入り口に鞄を置いて、背が高いから立っているだけで威圧感がある。怒ってはいないが呆れている。
「さっきまで頑張っていたわよ。配送業者の人が帰ったばかりだし、友梨亜ちゃんとも久しぶりだからちょっとおしゃべりしてただけでしょ」
まったく久しぶりに会ったのに小言を聞かされるなんて、と真奈さんが文句を言う。
「食べたいって言うからお寿司も頼んだのに、働かざる者食うべからずだよ」
「何よその言い方。息子って大きくなったらずいぶん偉そうねえ・・・昔はママ、ママってひっついて離れなかったのに」
「いったいいくつの頃の話ですか」
「体ばっかり大きくなって、可愛くないわ」
「この年になって母親に可愛いとは思われたくありません」
「あ、あの、私、着替えて来ます。お寿司は隣で食べましょうよ。私もお腹が空いたし、食べてから頑張りましょう」
本気ではないだろうが、今日のしいちゃんは何だか機嫌が悪い。仕事で何かあったのかな。
床に置いた鞄を持って隣の部屋へ向かう。
傍を通り過ぎるとき、ちらりとしいちゃんを横目で見たが、彼は私の方を見なかった。
「友梨亜ちゃん、久しぶり」
「真奈さん、お帰りなさい」
学校から帰るとちょうど荷物を運んできた業者さんが帰るところだった。
急遽彼女の帰国が決まったため、隣の大澤家の家具などをそろえる必要があった。
私の住んでいる家はどちらかと言えばデザイナーブランドのような家具でシックに統一されている。
私の部屋にはアイドルのポスターなどはなく、ぬいぐるみのようなメルヘンなものもない。
そこはしいちゃんとも趣味が合い、リビングもシンプルだけど座り心地の良さを大前提にしたソファを置いている。
全体的に白と黒、色はあってもせいぜい差し色程度で統一している。
真奈さんの趣味はもっとカントリー風で、木の温もりを感じさせる。
「学校はどう?」
まだ段ボールの積み上がった部屋で、私は真奈さんとお茶を飲んでいた。真奈さんは親子と言うより年の離れたお姉さんって感じ。
「普通です」
「普通って・・・友梨亜ちゃんならもてるでしょ」
「興味ありません」
「相変わらずね。まだ真嗣のこと、好きなの?」
愛情表現が豊かで、夫婦同伴の機会の多い外国にいたせいか真奈さんは恋愛に対してすごくオープンな人だ。
そしてすごくそういうことに勘が働く。
「わかります?」
「前みたいにあからさまに好き好きって言わなくなったけど、わかるわよ。あんまり表に出すと警戒するものね」
「そうなるなかと思って、なるべく言わないように努力はしているんです。でも、そうすると、私の熱も冷めてしまったんだと思われているようで、それはそれで複雑なんだけど」
「自分の息子のことをそこまで想ってくれる人がいるのは嬉しいけど、そろそろ他の人にも目を向けてもいいんじゃない?もしそれで、やっぱり真嗣がいいと思ってくれるなら、私はその方がいいな」
「でも、好きになれないかも知れないのに、相手に悪い・・・」
「最初にお試しでもいいならって、説明するのよ。それでもいいって言った相手とつきあえばいいの。女は恋で磨かれるんだから」
「ずっと孝嗣おじさんひと筋の真奈さんからそんな言葉が出てくるなんて・・・」
「今好きなのは孝嗣(たかつぐ)だけど、彼と会う前にも何人かとお付き合いしていたわ。だから孝嗣が一番だってわかったの。それに、俳優とかかっこいい人はかっこいいと思うもの。トキメキは必要でしょ?」
「お付き合い・・・具体的には何人?」
「あら、それ聞いちゃう? そうねえ、初めて彼氏が出来たのは中学1年だったかしら・・・」
「荷物も片付けないで、何の話をしているんですか」
不意にしいちゃんの声がして驚いた。振り向くとしいちゃんが玄関からまっすぐ繋がる廊下に立っている。今帰ってきたばかりでカメラの入ったバックも肩にかけたままだ。
「あら、真嗣、いつの間に帰ってきたの、早かったわね」
え、いつからそこにいたの? 今の話聞いてた? どこから?
「荷物の片付けを手伝おうと早めに帰ってこいと電話してきたのはお母さんでしょ。なのにおしゃべりなんて・・・これじゃあいつまで経っても終わりませんよ。友梨亜もまだ制服のままじゃないか。鞄も置いたままで・・・」
リビングの入り口に鞄を置いて、背が高いから立っているだけで威圧感がある。怒ってはいないが呆れている。
「さっきまで頑張っていたわよ。配送業者の人が帰ったばかりだし、友梨亜ちゃんとも久しぶりだからちょっとおしゃべりしてただけでしょ」
まったく久しぶりに会ったのに小言を聞かされるなんて、と真奈さんが文句を言う。
「食べたいって言うからお寿司も頼んだのに、働かざる者食うべからずだよ」
「何よその言い方。息子って大きくなったらずいぶん偉そうねえ・・・昔はママ、ママってひっついて離れなかったのに」
「いったいいくつの頃の話ですか」
「体ばっかり大きくなって、可愛くないわ」
「この年になって母親に可愛いとは思われたくありません」
「あ、あの、私、着替えて来ます。お寿司は隣で食べましょうよ。私もお腹が空いたし、食べてから頑張りましょう」
本気ではないだろうが、今日のしいちゃんは何だか機嫌が悪い。仕事で何かあったのかな。
床に置いた鞄を持って隣の部屋へ向かう。
傍を通り過ぎるとき、ちらりとしいちゃんを横目で見たが、彼は私の方を見なかった。