押しかけ婚〜あなたの初恋相手の娘ですが、あなたのことがずっと好きなのは私です
財布を取り戻そうと手を伸ばした橘さんから財布を遠ざけ私に預ける。
「返して欲しかったら、二度と友梨亜に近づくな」
「お、お前に言われる筋合いはない!身内だか何だか知らないが、偉そうなことを言うな」
まだしいちゃんに後ろ手に腕を羽交い締めされ、橘さんはなおも言いつのる。
「ぼ、僕はただ君が僕を見て微笑んで運命を感じた。君も僕を運命の人だと思っただろう?」
「そんなの接客上の笑顔よ。あなたに好意があって微笑んだんじゃ無いわ」
「いいや」
「違うとさっきから言っているだろ、いい加減諦めろ。これ以上騒ぐと警察に通報するぞ」
既に通りすがりの人たちが私たちのことを遠巻きに見ている。このままここで騒ぎ続ければ、誰かが警察を呼ぶかもしれない。
「今この場を立ち去り、二度と近づかないと約束するなら警察は勘弁してやる」
「イ、イタ、いたた」
もう一度すごんで見せ、彼を突き放した。いきなり突き飛ばされて橘さんはよろよろと数歩よろけた。
しいちゃんは私から財布を受け取り、中から名刺を抜き出し、自分のポケットへ入れてから残りを彼に放り投げた。
「二度と片桐友梨亜に近づかないと今すぐ誓え」
「わ、わかりました。もう彼女には」
「橘 圭吾は二度と片桐友梨亜さんには、近づきません、繰り返せ」
「た、橘 圭吾は、に、二度と、片桐、ゆ、友梨亜さんには近づき、ません」
「よし」
橘さんがしいちゃんの指示通りに言い終えると、しいちゃんはポケットからペン型のICレコーダーを取り出した。ピッと音がしてそれを彼の前に突きつける。
「今のは録音したからな」
「しいちゃん、録音していたの。いつから?」
「最初からだ。仕事で持ち歩いているんだ」
それから再生ボタンを押し、私と橘さんの間に割って入ってからの出来事を再生する。
「ひ、卑怯だぞ」
「卑怯? 女性を怖がらせて追い詰めたやつに言われたくないね。お前が友梨亜のことを調べたように、オレもお前のことを調べて、これをお前の働いているところや近所、同級生にばらまいてやるからな」
完璧に脅しだったが、橘さんは見るからに青ざめ、慌てて立ち去っていった。
「あ、ありがとう、しいちゃん」
「とにかく中へ入ろう」
「う、うん」
「返して欲しかったら、二度と友梨亜に近づくな」
「お、お前に言われる筋合いはない!身内だか何だか知らないが、偉そうなことを言うな」
まだしいちゃんに後ろ手に腕を羽交い締めされ、橘さんはなおも言いつのる。
「ぼ、僕はただ君が僕を見て微笑んで運命を感じた。君も僕を運命の人だと思っただろう?」
「そんなの接客上の笑顔よ。あなたに好意があって微笑んだんじゃ無いわ」
「いいや」
「違うとさっきから言っているだろ、いい加減諦めろ。これ以上騒ぐと警察に通報するぞ」
既に通りすがりの人たちが私たちのことを遠巻きに見ている。このままここで騒ぎ続ければ、誰かが警察を呼ぶかもしれない。
「今この場を立ち去り、二度と近づかないと約束するなら警察は勘弁してやる」
「イ、イタ、いたた」
もう一度すごんで見せ、彼を突き放した。いきなり突き飛ばされて橘さんはよろよろと数歩よろけた。
しいちゃんは私から財布を受け取り、中から名刺を抜き出し、自分のポケットへ入れてから残りを彼に放り投げた。
「二度と片桐友梨亜に近づかないと今すぐ誓え」
「わ、わかりました。もう彼女には」
「橘 圭吾は二度と片桐友梨亜さんには、近づきません、繰り返せ」
「た、橘 圭吾は、に、二度と、片桐、ゆ、友梨亜さんには近づき、ません」
「よし」
橘さんがしいちゃんの指示通りに言い終えると、しいちゃんはポケットからペン型のICレコーダーを取り出した。ピッと音がしてそれを彼の前に突きつける。
「今のは録音したからな」
「しいちゃん、録音していたの。いつから?」
「最初からだ。仕事で持ち歩いているんだ」
それから再生ボタンを押し、私と橘さんの間に割って入ってからの出来事を再生する。
「ひ、卑怯だぞ」
「卑怯? 女性を怖がらせて追い詰めたやつに言われたくないね。お前が友梨亜のことを調べたように、オレもお前のことを調べて、これをお前の働いているところや近所、同級生にばらまいてやるからな」
完璧に脅しだったが、橘さんは見るからに青ざめ、慌てて立ち去っていった。
「あ、ありがとう、しいちゃん」
「とにかく中へ入ろう」
「う、うん」