アオハルリセット
「ねえ、そうだ! これ知ってる?」
千世が空気を切り替えるような明るい声でスマホを見せてくる。そこには〝ダウトカメラ〟と書いてあった。
「なにこれ?」
訝しげに香乃が問うと、千世がにやりと口角を上げた。
「撮影者が質問をして、撮られる側が答えるの。それで嘘をついていたら、その人の周りに白い光のエフェクトが出るんだって」
「えー……嘘くさ」
「ちょっとやってみようよ! 試しに嘘ついてみて!」
気乗りをしない様子の香乃に千世がスマホのレンズを向ける。
「じゃあ、小テストの予習をやってきた?」
「いいえ」
——カシャッとシャッターを切る音がした。千世は画面を見ながら「おお!」と声を上げると、私と香乃にスマホを見せてくる。
「わ、本当に香乃の周りが白く光ってる!」
香乃の輪郭がほんのりと白く発光していた。どういう仕組みなのかわからず、驚いていると香乃が苦い笑みになる。
「こんなん子ども騙しだって。どうせランダムだよ」
「でも千世が嘘をついてって言ってたから、本当は小テストの予習してきてるんだよね?」
「まあ、一応」
スマホをブレザーのポケットに仕舞った千世がにっこりとしながら、「香乃様」と両手を合わせる。
「範囲教えてください!」
「えー……」
「お願い香乃〜!」
「ちょっと、重いってば!」
香乃に抱きつき、教えてと強請っている千世。そんなふたりを隣で見つめながら、私は微笑む。
高校に入って取り巻く環境が変わっても、関係はきっと変わらずに続いていく。
ほんの少しだけ芽生えている感情に私は気づかないふりをした。