美雪
 家に帰って、これからどうしようか考えた。
 
 あたしは人殺しになってしまった。

 いやあれは正当防衛による事故だった。
 でも雪女と言われたからちょっと力が入ってしまったのは確かだ。


 …違う。

 そんなのは理性で整理した言い訳だ。

 そんな理由ではない、と頭の中で否定する自分がいる。
 もっと何か別の理由がある。

 あたしの中に、雪女の格好を気持ち悪いと言われて怒った「私」がいた…?
 
 動かなくなった麻衣子を見てぞくりとしたのは、「私」の残忍な悦びのせい…?
 
 きっと、あたしの中の情念の化身である「私」が、福屋のくれた着物で目を覚ましたのだ。


 福屋は服と一緒に幸せも売る。着物と一緒に受け取った私の幸せは、雪女として生きること…?


 雪女なら人を殺しても不思議では、ないんじゃない、ねぇ、「あたし」…。

 「私」の声が聞こえた。

 

 何かが、あたしのなかではじけ飛んだ。

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