美雪
「あああぁぁあぁああぁあ!!」
 私は叫んで、周りのツララと北風を集めて、私を殴った男の頭と背骨めがけて勢いよく飛ばした。

 男は私の腕を放して倒れた。
 即死のようだ。

「おい!お前どうしたんだよ!」
 生きているほうの男は何が起きたか理解できない様子だったが、私の平然とした顔を見て何か悟ったのか、悲鳴を上げて逃げようとした。

「あなたは私の顔を殴った。絶対逃がさない…」
 私は呟き、凍てつく空気でつむじ風を創り出した。
 そしてその風で地面に投げだされて冷たく濡れたマフラーを男の首に巻きつけた。

 男の足が地面から離れていく。
 首を締め付けようとするマフラーから逃れようと暴れていた男の体の動きが次第に小さくなる。
 そしてボキッという首の骨が折れる鈍い音とともに動かなくなった。

「うふ…ふふふ」

 私は強い。
 もう何も怖くない。

 そう思うと自然と口が笑みで歪んでいく。


 公園を立ち去ろうと歩き出すと、林から女が現れた。二十代半ばくらいの、ショートカットの女だ。
「あなたまさか…」
 と女が呟く。

 女は殺す気はないが、男たちを殺すのを目撃されたのなら始末するしかない。
 
私は冷気を操り、突風を作る為に静かに右手を上げた。こんな人間なんて、私の手にかかればあっという間に動かなくなる。
 
 女を串刺しにしようと周りのツララに意識を集中させたそのとき、女が拳銃を構え、銃口を私の頭に向けた。
「!あなた、なんで銃なんて持ってるの?銃刀法違反とかじゃないの?」
「殺人鬼に言われたくないわ。」
 女は険しい表情で答えた。

「待て西藤!」
 男の声が聞こえた。
 ゴッ。
 首の後ろに衝撃を感じ、そこで私の意識は途切れた。
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