美雪
「えっと…」
 返答に困っていると、直人はたたみかけるようにて質問してきた。

「公園で男が二人死んでいたが、君と関係があるのか?それに最近君の住んでいる辺りに通り魔が出るらしいのだが何か知っているか?…それと、君が身に着けていた着物に血痕が付いていたんだが…」

 直人は私が何人も殺したことを知っている。

 まずい。非常にまずい。
 でも親には連絡しないと言っていた。この男は何を考えているのだろう?


「…私に何をしろって言うんですか?」
 体が勝手に震えた。

「君が物分りのいい子で助かったよ。実はね、国が手配した私達でもテロリストには手を焼いているんだ。だから、君の手を借りたいんだ。もちろん極秘で。警察にもね。」

 あたしの目の前で優しい顔ですごい頼み事をしている男。
 この男は、私を利用する気だ。

 でも、何故かそれはあたしには全く問題のないことだった。
 「私」は人を殺したがっているし、「あたし」は警察に捕まりたくない。
 
 それに、この男の笑顔をもっと見たい、と思った。

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