美雪
 手始めに冷気を集めて、店のショーウインドウを凍らせてみた。
 これじゃまともな攻撃にはならない。

 一人一人凍らせていれば、他のやつにやられてしまう。
 何せ相手は大勢なのだから、もっと攻撃力のあるものでないと。

 凍りついたショーウインドウを、強い風をおこして吹き飛ばしてみた。
 ガラスの破片はそこら中に飛び散った。自分に破片が当らないように、風で吹き飛ばす。

 その瞬間、何か掴んだ気がした。もっと威力のある攻撃ができる…。

 本能が私の体を動かす。

 右腕を上げて冷気を集める。
 集まった冷気がどんどん冷えて、液体になっていく。きっと理科の授業で聞いた液体窒素だ。

 建物の影から猫が出てきた。
 液体をぶつけると、猫と地面がたちまち凍りつく。

 だめだ。もっと強力な攻撃でないと。

 周りの雪を集めて、電柱並みの巨大な刀を無数に作る。
 それらを高く飛ばして、前方のビルに突き刺すと、ビルは轟音を立てて倒れていく。

 ビルが倒れていく方向に、直人がいた。

「逃げて直人!」
 私は風をつくって直人を吹き飛ばした。直人のすぐそばにビルが横たわった。

「直人!」
 直人の顔が青ざめている。そうだ。私が生み出す風は、人には冷たすぎる…!
「誰か…っ!」
 私が叫ぶと、西藤が走ってくる。
「何してるの!隊長から離れて!」

 あたしの体は力の使いすぎで、冷気を放ち続けていた。直人の髪の毛がどんどん凍っていく。

 
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