美雪
 西藤が私を突き飛ばして、通信機でどこかに電話をかけた。

「ねぇ、直人は助かる?」
「さぁ。死んでしまうかも知れないわね。あなたのせいで。」
 西藤は冷たく言い放った。

 私はこいつが嫌いだ。
 でも、今西藤を殺してしまったら直人が助からなくなってしまう。

 その後、組織の車が来て、直人と西藤を乗せていった。私は違う車で病院に戻った。

 公園で西藤に会った後あたしが目覚めた病院は、直人の組織の本部だったようだ。
 あたしは運転していた男に渡された組織の制服に着がえ、直人のいる病室の前にいた。
 私のせいで直人はこんなことになってしまったから、合わせる顔がなかった。
 
 部屋の前でぐずぐずしていると、組織の男の人達がこっちに向かって来た。あたしは何故か反射的に隣の部屋に身を隠してしまった。

 男の人達が直人の部屋に入り、何か話している。
 
 直人の声が聞こえてきた。
 よかった。助かったんだ。

「大丈夫かよ隊長。」
 壁を隔てていても、会話が結構はっきりと聞こえてくる。

「ああ。でもひどい目に遭ったよ。死ぬかと思った。あの雪女、なんてやつだ。」

 直人に嫌われてしまった。確かに、あんなことをされたら無理もないかもしれない…。
 体の力が抜けて、その場に座り込んでしまった。

「俺、現場見てきましたよ。何なんですかあの威力。人間じゃないですよ!」
「雪女は人間じゃなく妖怪だろ?それにあれは味方なんだから。あんな大砲、相手にはないさ。」

 隊長である直人を傷つけたせいで組織に追放されると思っていたから、兵器扱いされてショックなことより、直人のそばにいられるのが嬉しかった。

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