美雪
 異常なほど自分が直人に執着しているのはきっと、直人が凍てついた心を暖めてくれたからだ。

 普通に恋愛をしている女子高校生なら、こんなことは思わないだろう。
 
 あたしは直人のためなら何でもできる。あたしは、こんなにも人を愛せる、ある意味幸せな人間かもしれない。



 私は直人のために何でもした。
 殺せという人はいくらでも殺した。

 でも、ある家族を全員殺せと言われたときは、精神的にかなりきつかった。

 親を殺され、絶望と恐怖で泣き叫ぶ子供を殺すときは、心が痛かった。

 子供を殺した瞬間、私が今まで殺した人達にも家族がいたのだと気づいた。

 私は何人もの人の悲しみを生んでしまった。

 そしてこれから私は、何人殺して、どのくらいの絶望を生むのかと考えると、気が狂いそうになった。

 そうだ。こういうときには考えるのをやめなければ。おかしくなってしまう。

 いや、もうずっと前から狂っていたのかもしれない。


 白い着物を身に着けた、あの夜から。
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