美雪
 寒さで目が覚めた。

 あたしは自分の部屋にいた。

 カーテンが少し開いていて、そこから雪景色が見える。

 あたしは雪山で眠っていたはずなのに、なぜ部屋で目が覚めたのだろう?


 疑問に思いつつ、朝の散歩に出かけた。「ふくや」のあったところは空き地になっていた。

 家に帰ると、お母さんが起きて朝食を作っていた。
「今日はずいぶん早いのね。散歩に行ってきたの?」
 お母さんが背中を見せたまま尋ねてきた。

「うん…ねぇ、お母さん。お父さんは?」
「まだ寝てるわよ。」
 時間が戻った?

 いや、私は悪夢を見ていたんだ。

 やり直せる。

 
 今度こそ、人と触れ合いたい。

 傷ついてもいいから、全力で向き合いたい。


「お母さん、お願いがあるんだけど。」
「え?」
 お母さんが驚いて振り向く。

「お弁当作ってくれない?あたし、学校に行く。」

 お母さんが泣いた。

 ごめんなさい。あたし甘えてた。

 もう、逃げないから。
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