捨てられたひよっこ聖女の癒やしごはん~辺境の地で新しい家族と幸せライフを楽しみます!~


 従ってリズの炊事場にいたというアリバイを証言してくれる人が一人もいない。

(どうしましょう。どうやって無実を証明すれば……)
 汗が滲む手でエプロンを握り締めていると、聖杯を抱えている修道女がドロテアに話し掛けた。

「ドロテア様、私はあなた様のお召し物を届けに昼間こちらへ伺ったのですが、その際に保管室から立ち去る者を遠巻きに目撃しました」
 着替えを届けに来る頃といえば、邸を掃除していた修道女と花を生けに来た修道女たちが引き上げた後だ。着替えを届けに来る修道女は決まっていつも最後に邸へやって来る。

 その時間帯となると、リズがまだ炊事場で食材管理をしている頃だ。
「後ろ姿だけですが、はっきりとこの目で見ましたとも。その者の髪は丁度リズベットと同じ長さで、シルバーブロンド色でしたよ」

 着替えを届けに来た修道女の一言によって、疑いの目がリズへと集中する。

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