捨てられたひよっこ聖女の癒やしごはん~辺境の地で新しい家族と幸せライフを楽しみます!~
第8話
リズがクロウの背中を見送っているとヘイリーが声を掛けてきた。
「メライアが先に要塞へ行って看病してくれています。大人数に対してメライア一人だけではいずれ過労で倒れてしまいます。これから大急ぎで準備をして僕たちも出発しましょう」
「分かりました!」
リズはヘイリーと一緒に薬工房へ行き、必要なものを集め始めた。薬工房は教会本部と同じような造りになっていて、少しだけ懐かしい感じがした。
リズはヘイリーの指示に従って、てきぱきと器材を集め始める。
すり鉢にすりこぎ棒、小鍋。その次に解毒薬に必要な材料だ。日の入り前に集めた朝露や蜂蜜、満月に咲いた夜花、リンデンフラワーなど、薬に必要な材料も集めていく。
ヘイリーはその様子を眺めながら腰に手を当てると舌を巻いた。
「リズは凄いですね。ここに来るのは初めてのはずなのにどこに何があるのか分かっています」
椅子に乗ってテーブルにリンデンフラワーを置いたところでリズはびくりと肩を揺らして手を止めた。
(それは私が教会本部の薬工房でお手伝いをしていたからですとは口が裂けても言えません……)
リズははぐらかすような笑みを浮かべて答えた。