捨てられたひよっこ聖女の癒やしごはん~辺境の地で新しい家族と幸せライフを楽しみます!~
『リズ、氷くらい私が出してあげるの。それくらい朝飯前なの!』
「えっ、アクアは氷が出せるのですか?」
『私なら氷を出すことだって簡単なの』
アクアは得意げに拳で胸をトンと叩く。
「凄いです。流石はアクア! 是非お願いします」
リズは頼もしい存在の登場で目をキラキラと輝かせる。
『……水の妖精って氷は専門外じゃないのー?』
『シーッ。大きな声で言ったらアクアに聞こえてしまうよ』
ヴェントとイグニスが二人でひそひそと囁きあっていたがリズの喜びぶりに二人は何の反論もしなかった。
ソルマーニ教会から氷は持ってきているが、あれは患者の熱冷まし用だ。この時期の氷は貴重で分けてもらうのも申し訳ないのでアクアの提案はリズにとって非常にありがたかった。
「ではアクア。このボウルの中に氷を入れてくださいね」
『任せなさいなの』
アクアはお腹に力を込めるように呻り始めると小さな両手を前に突き出した。
両手からは青白く光る球が現れ、そこから綺麗に成形された氷がいくつもボウルへと落ちていく。
『わっ! 本物の氷だー』
『水の妖精なのになんで?』
心底驚いているヴェントとイグニスはボウルの中に収まる氷とアクアを交互に見つめている。
『ふふん。私は寒い地域で生まれた水の妖精だから半分は氷属性なの』
アクアは得意げに言い、ある程度の量に達すると氷を出すのをやめた。
その間リズは小鍋の中のレモン果汁と蜂蜜に集中していた。
焦げ付かないよう、液体に小さな気泡が沸々と沸いてきたところで素早く火から下ろし、スプーンでよくかき混ぜる。これでレモネードの一番大事なレモンシロップが完成した。
粗熱が取れたらピッチャーにレモンシロップと持ってきていたベリーシロップ、水、氷を入れてよくかき混ぜる。
液体がピンク色になったらできあがりだ。