捨てられたひよっこ聖女の癒やしごはん~辺境の地で新しい家族と幸せライフを楽しみます!~
「いや、ここは俺に任せてくれ。ケイルズにはこの氷を届けてもらわないといけないから要塞へ行く準備をしてくれ」
今日は晴天で日が高くなれば気温も上がり、氷が溶けるスピードが速くなるだろう。いくら標高の高い山間だからとはいえ、早く持って行ってもらわなければいけない。
「分かりました。では、僕は町へ行って馬の手配をしてきます。ご存じの通り馬小屋にはロバしかいません。氷を運ぶには不向きです」
ソルマーニ教会では馬とロバを一頭ずつ飼っている。ロバは馬よりも荷重に耐えることができるが足が遅い。運ぶとなると氷の何割かが溶けてダメになってしまう可能性がある。ケイルズはそれを危惧して町へ行って馬の手配をしようとしていた。
「それなら俺の馬を使ってくれ。どうせ俺は外へは出られないし、あいつも窮屈な馬小屋で過ごすよりも外へ出て走り回りたいだろうから」
クロウの提案にケイルズは破顔する。
「ありがとうございます! では荷物があるのですぐに持ってきますね!!」
ケイルズは宣言通り一旦修道院へ行ってすぐに戻ってきた。あらかじめ荷物を準備していたのだろう。両手には大きな鞄が握り締められている。
その間にクロウは氷の積み込みを終えていた。ケイルズから荷物を受け取ってそれを荷台に載せると馬を繋ぐ。
「すぐに教会へ戻ってきますが、僕が留守にしている間はよろしく頼みますね」
「ああ。誰も入って来れないように一旦教会の門は閉めておく」
御者台に乗って手綱を引くケイルズはこちらに手を振って要塞へと出かけて行った。
手を振り返したクロウは教会表の鉄門を閉じてから離れ棟に戻ることにする。礼拝堂と修道院を通り過ぎ、洗濯干し場を横切れば離れ棟に辿り着く。すると丁度、洗濯干し場を過ぎたところでアスランが姿を現した。