捨てられたひよっこ聖女の癒やしごはん~辺境の地で新しい家族と幸せライフを楽しみます!~
「アスラン。今日も来てくれたのか」
アスランは尻尾を元気よく振りながらクロウに近づき、戯れてきた。赤ん坊の頃に拾ったが身体は成体のライオンに近い大きさだ。
二足で立ち上がればクロウの鎖骨あたりまでの身長がある。少し前までは飛びかかられてもなんともなかったが、今は迫力があり、それなりに体重もある。
久しぶりに戯れたことでクロウはアスランの体重の予測が立てられず、飛びかかられた途端によろけてしまった。足に力を入れてなんとか踏ん張ったが下手をすれば地面に尻餅をついていただろう。
「立派になったな、アスラン」
動物を飼ったことも育てたこともないクロウにとって、すくすくと育ってくれたことは非常に感慨深い。嬉しくなって少しだけ羽目を外して戯れていると、ポケットに入れていた加護石が地面に落ちてしまった。
あっとクロウが声を上げた時には遅かった。楕円形のそれは回転しながら数メートル先まで転がっていく。
ソルマーニ教会の離れ棟に来てから既に一ヶ月以上経っている。加護石の力のお陰で昼間は教会敷地内を自由に移動できるし、夜だって加護石を肌身離さず持って守護陣内の離れ棟にいれば死霊や影に襲われることはなくなった。
今は日中だが守護陣の外で加護石が身体から離れてしまっている。