捨てられたひよっこ聖女の癒やしごはん~辺境の地で新しい家族と幸せライフを楽しみます!~
クロウは腰を低くし、戦闘態勢に入った。ピストルを構えて周囲を警戒する。神経を研ぎ澄ませ、死霊や影が潜んでいないか、襲っては来ないか目を瞑って気配を探った。
ところが、いつまで経って襲ってこない。
小鳥のさえずりや町の方からの賑わいが聞こえるだけで、死霊や影の気配はまったく感じなかった。
「どうして加護石が離れたのに何も襲ってこないんだ?」
面くらいながらも、クロウは辺りに死霊や影がいないか細心の注意を払う。もしかするとこれは自分を油断させる罠かもしれない。そう思ったが、杞憂に終わってしまった。
「これはどういうことだ?」
何の変化も起きないので首を捻る。戦闘の構えを解いたクロウは転がってしまった加護石を拾い上げる。腕を組んでじっと考え込むが結局答えはでなかった。
「聖力のある司教に浄化してもらわなければ、この呪いは解けないはずだ。それ以外で呪いを解く方法があるのか?」
手のひらの加護石をしげしげと眺めながら呟いていると、アスランが撫でろと言わんばかりに頭をクロウの身体に押しつけてくる。
「ああ、すまない。アスラン」
クロウは彼の要求に応えるべく、優しく頭を撫でてやった。
ここ暫く寂しい思いをさせてしまったのでアスランは甘えん坊な一面が加速している。