捨てられたひよっこ聖女の癒やしごはん~辺境の地で新しい家族と幸せライフを楽しみます!~


「それにしても、何も言わずに要塞から教会に来てしまったのによく俺を見つけてくれたな。探すのに苦労したんじゃないのか?」
 アスランは顔を上げて短く鳴いた。どうやらイエスと言っているようだ。
「本当にすまない。今まで構えなかった分、後で毛並みを整えるから許してくれ」
 クロウが胸毛を撫でるとそのままアスランは地面に座って尻尾を揺らしている。抵抗しないということは毛並みの手入れで帳消しにしてくれるようだ。
「ありがとう。俺の呪いが解けたらまた一緒に樹海へ行こうな」
 すると、アスランが目を瞬いて怪訝そうな顔をして、鼻面をクロウが手にしている加護石に何度も押し当てる。クロウは彼が何を伝えたいのか分からずに困り果てた。

『アスランはもう、呪いはとっくに解けているって言いたいんだよ』
 どこからともなく現れた妖精がアスランの気持ちを代弁してくれる。
「呪いがとっくに解けている? どういうことだ?」
 呪いが自然に解消するなど到底あり得ない。クロウが首を傾げると妖精が口を開いた。
『それもこれもリズのお陰。リズが作るご飯が呪いを消したんだ』
「リズのお陰……」
 クロウは妖精の言葉を繰り返した。
 つまり、リズには呪いを解く力があり、彼女のお陰でクロウの呪いは完全に解けている。

< 142 / 184 >

この作品をシェア

pagetop