捨てられたひよっこ聖女の癒やしごはん~辺境の地で新しい家族と幸せライフを楽しみます!~


「患者たちの容態ですが実を言うと先程完治致しました。今は毒も邪気も残っていません。ご足労頂いたにもかかわらず大変申し訳ございません」
 ヘイリーがしとやかに頭を下げると、大司教が慌てふためいた。
「なっ、なんだと? 魔物の毒を完全に消したというのか? 司教、おまえにはもう聖力がないはずだろう?」
 ヘイリーに力が戻れば自分の立場が危うくなると大司教は恐れているようだ。その証拠にヘイリーが聖力をどうやって戻したのか頻りに尋ねている。
 ヘイリーは胸に手を当てると告げた。

「大司教、教会本部を去る時に申し上げましたが私の聖力が戻ることは二度とありません。ですが、私以外に並々ならぬ聖力を持つ逸材が現れたのです」
「逸材だと!? それは誰だね? ……確かソルマーニ教会の聖職者は司教のおまえと修道士、それから修道女だったか」
 大司教は思い出しながら指を折ると漸く安堵の溜め息を漏らした。役職のない聖職者に浄化できるほどの聖力が宿ることは普段からよくあることで、一般的に修行の成果だと言われている。
 そして、なんの権力も持たない聖職者が並々ならぬ聖力を得たところで大司教の立場を揺るがす脅威にはならない。それらを総合的に判断して大司教は安心すると大きな腹を揺すった。

「ソルマーニ教会に所属しているのは修道士と修道女の二名です。要塞で看病に当たっているのは修道女・メライアです。……百聞は一見にしかずだと思いますのでまずは病室へ向かいましょう」
 ヘイリーはそこで話を切り上げると、病室のある建物の中へと案内していった。大司教もドロテアもヘイリーの後に続いて建物内へと入って行く。

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