捨てられたひよっこ聖女の癒やしごはん~辺境の地で新しい家族と幸せライフを楽しみます!~
やはり高いところから落ちるのはいつだって怖い。心臓はドッドッと大きく跳ねているし、お腹は縮み上がって身体は強ばる。
(だけど、さっきの抑揚のある音は……)
リズはその望みに掛けて崖から飛び降りた。あの音が正しければきっと――。
すると、水面に叩きつけられるすんでの所で誰かの腕に抱き留められる。
「リズ、無事か?」
視界に映り込むのは、クロウだった。
リズはアスランの背に乗ったクロウによって救い出された。安心と恐怖でない交ぜになっているリズはクロウに縋りつく。クロウもまた、リズを安心させるように力強く抱き締めてくれた。
「さっきの音はやっぱりクロウさんの指笛だったのですね」
「ああ。上空でリズが聖女に追い詰められていたところを発見した。叫ぶよりも指笛で合図した方が分かりやすいと思って」
声を張り上げるよりも指笛の方が山間では響くし、ドロテアにも警戒されない。結果としてクロウの判断は功を奏した形となった。