捨てられたひよっこ聖女の癒やしごはん~辺境の地で新しい家族と幸せライフを楽しみます!~
二人を乗せたアスランが上昇すると、崖の上では丁度、ドロテアがマイロンによって取り押さえられているところだった。
ドロテアは抵抗しているが男の、ましてやシルヴァ副隊長の腕力に敵うはずもなく、易々と捕縛される。
崖の上に降り立ったアスランから下りたクロウは、リズを抱き上げたまま地面に下りる。続いてマイロンから手錠の鍵を受け取るとリズの腕から鎖を外してくれた。
鎖は加護石と一緒に布に丸めて懐にしまう。すると、先程まで一人も現れなかった妖精たちが木陰からわらわらと飛んできた。
『リズ、無事で良かったの!』
『一時はどうなることかと冷や冷やしたよー』
『無事で何より』
アクアは大泣きしながらリズの頬に擦り寄り、ヴェントとイグニスが両肩にちょこんと留まる。
「みなさん、ご心配をお掛けしました」
リズは一人一人に声を掛けて妖精たちを宥めていく。
クロウはその様子を見届けると、ドロテアへと顔を向けて厳しい表情を浮かべた。
「聖女、いや魔女・ドロテア。おまえがこれまでにやってきた数々の悪行は既にこちらによって把握されている。教会だけでなく、聖国の反逆者として話はたっぷりと聞かせてもらうからな」
ドロテアは髪を振り乱しながら、歯を食いしばってクロウを睨めつける。
「私は間違ったことなんてしていないわ。これからも、アスティカル聖国の聖女で居続ける」
「妖精から力を借りることもできない聖女が聖女として君臨していいわけがない。もう、妖精たちはリズを聖女として認めている。いい加減諦めろ」
クロウが窘めるものの、ドロテアは一歩も引く様子はない。