捨てられたひよっこ聖女の癒やしごはん~辺境の地で新しい家族と幸せライフを楽しみます!~
降格させられた司教や司祭たちはウィリアムへ嘆願書を送り、クロウが調査に当たっていたのだ。そしてひょんなことから聖女ドロテアが次期聖女を殺して地位を固守していることが発覚した。
まったくもって偶然の産物ではあったが、大司教と同時に検挙することができ、これ以上犠牲者がでなくて済んだのは不幸中の幸いだったのかもしれない。
「……それにしてもドロテアが捕まってからもう三ヶ月が経ったのか。教会内部の腐敗は白日の下に晒され、再び正常な教会運営がなされるまでは陛下と宰相が管理・指導を行うようだな」
クロウは報告書から顔を上げると、後ろにある窓から外を眺める。季節は巡り山間の木々たちは鮮やかに紅葉し始めている。それを眺めながら、クロウは一年以上の潜入にようやく決着がついたと、心の底から安堵した。
丁度、軽く扉を叩く音がしてマイロンが部屋に入ってきた。
「お待たせしてすみません。隊長……いえ、クロウ様」
「部隊の再編成で忙しいのは知っているから気にするな。あと、前みたいに気さくにクロウと呼んでくれ」
「いやあ、流石に貴族で国王陛下の右腕を気軽に呼び捨てにするなんて畏れ多い」
マイロンは苦笑いを浮かべるとクロウが座る椅子の向かい側の椅子に腰を下ろす。
クロウは潜入捜査が終わったことで聖騎士団から抜けることになった。後を引き継いだのはもちろんマイロンで、彼はこれまでと同じように魔物からスピナを守るために尽力してくれている。