捨てられたひよっこ聖女の癒やしごはん~辺境の地で新しい家族と幸せライフを楽しみます!~
好奇心に駆られて、リズは重たい瞼をゆっくりと開いた。
すると目に映ったのは、聖騎士団の象徴である白を基調とした服に身を包む青年だった。
さらさらとした燃えるような真っ赤な髪。彫りの深い白皙の顔は眉目秀麗で、アーモンドの形をした瞳は翡翠色をしている。耳には細長い雫型の石のピアスがついていて、彼の動きに合わせて揺れていた。
聖騎士の制服にギョッとして、リズの意識は覚醒した。
(ど、どうして妖精界に聖騎士がいるのでしょう? 私は確かに崖から落ちて死んだはずなのに)
まさか妖精界に人間が、しかも聖騎士がいるなんて思いもしなかった。もしやこの聖騎士も以前に妖精界への追放を言い渡された人間なのだろうか。
とにかく、リズと同じように妖精界へ追放された身なら、いろいろと話が聞けそうだ。
青年はリズが起きたのを見て、ホッと胸を撫で下ろした。
「良かった。こんな樹海の真ん中で倒れていたから最初は死人かと思ってとても驚いた。手遅れになっていたらどうしようかと思ったが……目を覚ましてくれて安心したよ、お嬢ちゃん」
「いえ、こちらこそ助けてくださってありがと……おじょう、ちゃん?」
青年の『お嬢ちゃん』という声かけにリズは首を傾げる。自分よりも少し年上の相手からお嬢ちゃんと呼ばれるのはなんだか違和感がある。さらに違和感を覚えるのは自分が発した声色だ。
いつになく声質が幼くなっている。それに、立ち上がってみると視線の位置が異様に低い。
何がどうなっているのか分からず、下を向くと自分の手も身体も小さくなっていた。