捨てられたひよっこ聖女の癒やしごはん~辺境の地で新しい家族と幸せライフを楽しみます!~
第5話
疑念を払拭できないリズはさらに警戒を強めてしまう。
もしかしたら聖騎士を装った人攫いか物盗りかもしれない。
「お兄さんはどうしてこの樹海に一人でいるのですか?」
「この樹海は知る人ぞ知る貴重なキノコや薬草の宝庫だ。特に魔物から攻撃を受けた傷や毒なんかに効く。これがあれば聖力を持つ聖職者がいなくても、仲間の傷を早めに治すことができるし、毒の進行を遅らせることができるんだ」
魔物から受ける傷は普通の薬では治らない。治すには特別な薬草に加えて聖力が込められた薬、または司教以上の聖力を豊富に持つ人間の祈りによる治癒が必要になる。
毒の場合も同じで特別な薬草に加えて聖力が込められた薬と司教以上の浄化が必要になる。
ほら見てごらん、というようにクロウは腰につけている麻袋の口を開く。
そこにはこれまで見たこともないようなキノコや薬草がいっぱい詰まっていた。
「樹海は一度入れば二度と出られないなんて言われているけどそれは嘘だ。みんな自分の目だけを頼りにするから道に迷う」
「ふうん?」
「つまり、俺は相棒の目を借りて樹海を往き来することができる。見た方が分かりやすいかな」
クロウは立ち上がると口に指を当て、空を見上げてピィィと指笛を吹き鳴らした。甲高い音が辺りに響き渡ると、やがてクロウとリズが立っている場所に黒い影ができる。
空を仰げば見たこともない生物が羽ばたいていた。
それはこちらに急下降してくると、クロウの隣に降り立った。
「わあ! なあにこれ!?」
リズは目を丸くしてその生物を頭のてっぺんからつま先まで眺めた。