捨てられたひよっこ聖女の癒やしごはん~辺境の地で新しい家族と幸せライフを楽しみます!~

第2話



「実は、昨夜遅くから第三部隊シルヴァの隊長であるクロウ・アシュトラン殿が修道院の()()()に隔離されています」
 その話を聞いて、ケイルズとメライアのどちらかからヒュッと息を呑む音が聞こえてきた。
 離れ棟はどこの教会にも建てられていて、そこは伝染病に罹患した人や魔物に攻撃されて重体となり、手の施しようがない人などが収容される、いわば隔離所だ。

「クロウ様は魔物の攻撃を受けて重体なんでしょうか? あまりにも酷いとうちでは手の施しようがありません。教会本部に依頼してある程度聖力のある司教以上の方を派遣していただき、治癒を行ってもらわなければいけません」
 リズは初めて耳にする内容に困惑した。

(魔物が人を襲うのは知っていましたけど、攻撃を受けて重体になると聖力がなければ救えないなんて知りませんでした。それに離れ棟が使われるほどなんて……クロウさんは大丈夫なんでしょうか)
 教会本部にも離れ棟はあったが、使っているところは一度も見たことがなかった。

 しかしここは第三部隊シルヴァが最前線で国境を守っている辺境地。これまで過ごしてきた安全な王都と比べて逼迫している空気がひしひしと伝わってくる。
 ヘイリーはゆっくりと首を横に振った。

「彼が受けたのは魔物ではなく……死霊の接吻です」
 それを聞いたケイルズが慌てふためいた。

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