捨てられたひよっこ聖女の癒やしごはん~辺境の地で新しい家族と幸せライフを楽しみます!~
「このスープとパンを食べてください。きっと心がホッとします。少しでも食べないと体力が持ちませんよ」
にっこりと微笑むリズに対して、クロウは困惑する。
「気持ちは大変ありがたいんだが……」
「お兄さん、呪いに打ち勝つには体力が必要です。死霊の接吻を受けてから何も食べていないのであれば、なおのこと。身体には栄養が必要ですよ!」
リズは真剣な面持ちで身を乗り出すようにして訴える。
それでもクロウは困った表情を浮かべるだけで手を動かそうとしなかった。
大変な目に遭って食事も喉を通らないのかもしれないが、せめて一口だけでも食べて欲しい。
「こんな状況でお腹は空いていないのかもしれませんが、少しでも……一口だけでも食べましょう」
リズが必死に何度も訴えると、とうとうクロウが根負けした。
「……分かった。じゃあ、一口だけ」
クロウはリズから木製のスプーンを受け取ると、細かく刻まれたタマネギやベーコンを掬って口へと運ぶ。