捨てられたひよっこ聖女の癒やしごはん~辺境の地で新しい家族と幸せライフを楽しみます!~

第2話



「雨乞いの儀式を成功させるためにも、ドレスを完璧に仕上げなくては」

 リズは服の袖を捲ると、持ってきていた裁縫道具を開いてドレスの生地の色と同じ青い糸を選んで針に糸を通した。
 空いている穴の端に針を通して真横から出し、反対側の真横へ針を通して真上に刺す。それを何回も繰り返して最後に糸を引っ張って閉じれば穴は綺麗に塞がった。

「――ふぅ、目立たなくなりましたし、これで良いですね。叔母様も喜んでくださるはずです」

 ドレスの修繕は思ったほど大したことなく、解れや取れかけのボタンを付け直す作業を入れても三十分程で終わってしまった。
 リズはドレスが皺にならないよう綺麗に畳んでからほくほく顔で寝室を出る。


 丁度、花を生けに来た修道女と出くわしたので軽く挨拶を交わした後、炊事場で食材管理を行った。
 食材管理はリズと料理担当の修道女が行っているのだが、風邪で寝込んでしまっているので今日はその代わりだ。それも終わって漸く手が空くと、仲の良い修道女と一緒に薬草園の薬草を摘みに出かけた。

 薬草園に生えている薬草は薬にして週に一度、信者へ提供する。
 今日集めるのはカモミールだ。

「ここに来て間もない頃は薬草と毒草の見分けがつかなかったけど、随分手際が良くなったわ」
 そう言って微笑みかけてくれる修道女はリズよりも二十歳上。ここに来た時から娘のように可愛がってくれている。

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