捨てられたひよっこ聖女の癒やしごはん~辺境の地で新しい家族と幸せライフを楽しみます!~
朗らかな修道女が好きで、時間があれば薬草園へ行き、リズは薬草の知識を身につけていった。
「根気よく指導してくださったお陰です。いつか私に聖力が備わったら難しい薬の作り方を教えてくださいね」
リズは今のところ簡単な薬しか作ることしかできない。難しいとされる薬には聖力が必要となるので、それがゼロであるリズには作ることができないのだ。
「ええ、約束しますとも。その代わり、今度また私の好きなビスケットを焼いてくださいね」
修道女が茶目っ気たっぷりに小声で話してくるのでリズは堪らず声を出して笑った。
「ええ、もちろんですよ」
それから二人で他愛もない話をしながらカモミールを籠いっぱいになるまで摘むと、教会の隅に建てられている薬工房へ持ち帰った。
薬工房の中は、薬草特有の匂いがツンと鼻を刺激する。
壁際には逆さにした薬草がびっしりと吊されていて、棚の一番上には植物の根や木の実が瓶詰めされている。その下の段にはすり鉢やすりこぎ棒、抽出器具など作業に必要な道具も整然と並べられている。
作業台の上に籠を置いたところで夕刻を告げる鐘が鳴ったので今日の作業はここまで。明日はカモミールを乾燥させるらしく、リズは修道女に手伝うことを約束すると邸に帰った。
薬工房を出て教会敷地内を歩いていると、前の小径を聖騎士たちが慌てた様子で走っていくのが見える。
何か事件でもあったのだろうか。