捨てられたひよっこ聖女の癒やしごはん~辺境の地で新しい家族と幸せライフを楽しみます!~


 平生、妖精から力を借りるには何かしらの対価を差し出さなくてはいけない。
 砂糖菓子を妖精にあげるのは一種のおまじないで、何かあれば彼らが手助けしてくれるかもしれないからだ。とはいえ彼らは気まぐれなので、必ず助けてくれるとは限らない。確実に力を借りるには妖精の愛し子と言われている聖女でなくてはならない。

 妖精たちにとって聖女は側にいて居心地が良く、手を貸したくなるのだという。
「リズが妖精を見て話すことができることは樹海で出会った時から知っていました。しかし、妖精から力を借りられるほどの聖力があるなんて……率直に言って、驚きを隠せません」

 クロウが驚きを隠せない理由は、充分な聖力が発現するのが一般的に十歳からだからだ。その前からも微力な聖力を持つ子供はいるが十歳以下で妖精に力を借りられるほどの聖力を持つ人間は歴史上聞いたことがない。
 ヘイリーはクロウの意見を聞きながら椅子の肘掛けに手を置き、指でトントンと叩く。

「ここからは私の独り言として聞いて欲しいのですが、リズが次期聖女なのではないか、という考えが頭を過って仕方がないのです。まだ確信は持てませんが、妖精はリズによく懐いています。それに、聖女ドロテアの代になってもう十年が経ちます。そろそろ次期聖女が現れてもおかしくはありません」
 それはクロウも同じ意見だった。

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