エンドロールの先でも君を恋うから
「と、とりあえず遅れちゃうので行ってきます。月ちゃんごめんね、先に帰ってて」
「了解!由良はそこらへんに捨てとくから気にしないで〜ドレス写真待ってるよ〜」
背を向けても由良くんの納得していないような顔が思い浮かぶんだから、振り返ればもっとひねくれた顔をしているだろう。
振り返らないけど。
どこのクラスも文化祭準備の最中で、お化け屋敷の血のりや呼び込み用のカラフルな看板、楽しそうに作業するのを見ているだけで気持ちが弾んだ。
「あのさ、弥衣って秋の何?」
「.....重り?」
「聞き間違い?」
きっと初めて話した時に比べたら、仲良くなってきたんだと思う。廊下で距離を取らずに並んで歩けるくらいには。
「逆になんだと思ったの?」
「恋人にしか見えねえだろ、まだ秋に言われてないだけじゃないの」
「由良くんはそう思ったらすぐ言うタイプだよ」
“大事”の基準は人それぞれ。
例えば恋人になるのに必要な一般的な量の“大事”と、由良くんにとっての私と、私にとっての由良くんの“大事”が同じ。
周りよりも“大事”の量が多くたって形が違うだけ。
私は由良くんが大事。由良くんも私を大事に思ってくれている。
今はそれだけで十分。じゃ、ないの?