エンドロールの先でも君を恋うから
ノートの端には下手っぴな優羽であろう男の子の絵。
触れても温度のないその絵に涙がにじんだけれど、隣の彼に気づかれたくなくてすぐにノートを閉じる。
病気になる前までの優羽には、好きな食べ物がたくさんあった。
桃ゼリーとプリンもそうだし、草食系なイメージがあるけど、食べ放題では元を取るためにひたすら食べていたり。
細い体だと思いきや、程よく筋肉が付いているのを見た日は目を丸くした。
「ねえ弥衣、僕の桃は?」
「優羽には食べられたくないんだって、私の口に入っていったのかなあ」
「弥衣、プリンの上の部分が削られてるんだけど…?」
「元からじゃないかな?」
病気になってからは食事制限で、好きなものが思うように食べられなくなっていった。
優羽も、そして私も、その時から甘いものは口にしなくなった。
少しでも優羽の辛さを知りたかったから。それに、優羽と食べるから美味しく感じるんだって知ったから。
たまに、甘いものを多めにとっても許してもらえる日、二人で桃のゼリーを食べるのが好きだった。